テレビゲームだけでなくコンテンツ制作や医療の分野から注目を集めるVR技術。グリーと一般社団法人VRコンソーシアムが共催した「Japan VR Summit」では、「Oculus Rift」「HTC Vive」「PSVR」の競合3社の代表者によるトークセッションが行われました。競合でありながら3社代表それぞれがお互いのVR機器を褒め合うという内容であったということです。
https://japan.cnet.com/news/business/35082649/
今後のVR市場などの展望にも触れられており、それぞれまた違った見方をしているということが分かりました。Oculusの池田氏は海外と比較して日本には富裕層が多いことに着目。VR市場拡大を確実のものであるとしています。ソニーの吉田氏、HTCのPao氏はコンテンツの充実や日本のクリエイティブ溢れる人材に期待を寄せています。VRの当面の課題はコンテンツの充実だと考えてよいでしょう。ハードが高価な分、十分な普及を確信できないかぎり開発をしたがらない、悩んでいるという開発会社さんも多いと思います。また、最先端技術から「より新しいもの」を作り続けなければならないという視点にこだわりすぎて、どのようなコンテンツを作っていけばよいのかというビジョンやイメージが湧いてこないというケースもあるのではないでしょうか。
カルト作品×VR
しかし、何も一から新しいVRコンテンツのアイディアを練らずとも、普及し始めてから約40数年というゲームの歴史を振り返ってみれば、VRの技術と掛け合わせることで注目を集めるコンテンツを生み出せるかもしれません。皆さんはクーロンズ・ゲートというプレイステーション用ソフトをご存知でしょうか。1997年、ソニー・ミュージックエンタテインメントから発売されたクーロンズゲートは、ディープで濃厚な世界観が特徴的な作品で、カルト的な人気が今もなお続くゲームです。ゲームの世界観のモデルとなっているのは現在は取り壊された九龍城砦のスラムがモデルとなっています。主人公は香港最高風水会議の超級風水氏という設定で、突如別世界から現れた九龍城に潜入し、乱れた気脈を正して世界の存続を図ろうとするゲームです。そんなクーロンズゲートのダークでカオティックな世界をVRで体験できるイベント、「クーロンVR体験イベント」が実施されます。次世代クーロンズゲートのための研究開発の映像を体験できる本イベントは、プレイステーションのクーロンズゲートで実際に使用された素材を多用し、その独特な世界観を体験できるようになっています。スチームパンクの世界を彷彿とさせるアジアの怪しげな雰囲気を味わえるイベントだと思います。現在募集は一旦締め切りられ、追加開催が予定されていますので、興味がある方は要チェックです。
VRの照準は時代を超える
かつて3Dハイビジョンテレビが電機メーカー各社から一斉に発売され、これからどんどん立体視の時代がくるぞ!と叫ばれていました。しかし今ではすっかり3Dは映画の1上映方式のような扱いになってしまっています。我々の生活に立体視が普及したとは到底思えません。かくいう私も3DSは横のつまみを常に最小にして立体視オフでプレイしています。3DSとは直接関係はありませんが、兎にも角にも3Dテレビは普及しませんでした。考えられる大きな理由は2つあります。1つは3Dテレビ自体の値段の高さから購入意欲があまり生まれなかったこと、そしてもう1つは対応するコンテンツの少なさです。せっかく高いお金を出して3Dテレビを購入したのにもかかわらず、それに対応する番組が少なかったのです。さて、VRですがこれと同じ道筋を辿らないようにするには、高い値段、酔いやすそうという欠点を打ち消すようなコンテンツを次々と制作していくことが重要なのです。そこで、PS1などの今でこそレトロゲームになってしまった作品をリアルタイムで遊んでいた30後半以降の働き盛りなビジネスパーソンに対して、ノスタルジーを喚起させつつ、新しいエンターテイメントの形を提示するということができるのであれば、お金を持っている層からの指示を集める手段として有効なのではないでしょうか。
バーチャル世界の高い構築技術とコンテンツの充実
ゲーム制作において3DCGの分野が求められる水準が、VRによってグンと高くなりました。より美麗な描写をするのにはどうしたら良いのかということはもちろん、懸念されるVR酔いを解消するという役割が、3DCGデザイナーの腕に大きくかかっています。人体への健康的影響にも関心が集まっているので、人の脳や視覚などに関する知識の習得が必要になるかもしれません。プログラマーでしたら、作業効率を上げるためのグラフィックツールやミドルウェアの開発にもニーズが出そうです。ファンの多いレトロゲームを題材にする場合、そのコンテンツに傷をつけてはならないというプレッシャーを感じながらの作業となります。ゼロベースから新しい企画を作るよりもコストや制作期間がかかってしまう可能性は無きにしも非ずです。ビッグタイトルであればあるほど安易なリメイクは避けられるでしょう。FF7などが良い例です。完全新作リメイクをするのに20年の歳月が経ちました。
非常に難しい問題ではありますが、VR開発に興味のある開発会社は積極的にVR参入をしていって欲しいところです。コンテンツとして優れているものがなければハードも普及しません。Wii Uの売り上げが任天堂据え置きハードの中でも今のところ最低であり、生産終了という誤報が飛び交ってしまったのは、ローンチタイトルの戦力不足も原因の一つなのではないかと思います。決して安い買い物ではないですから、これから先面白い作品が出ますよ!という告知なしに手にできるものではありません。VRの普及にはコンテンツの充実が必要不可欠であり、既に発売されたタイトルのリメイクなどでも良いので注目を集めることは重要なのではないかと思います。
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