キーパーソンを直撃するコラムが連載開始
日経トレンディネットが2016年4月18日から「キーパーソン激白!進化するゲーム・ビジネス2016」の連載を開始しました。昨今のゲーム市場の大幅な成長率とVRへの期待、スマホゲーム市場やゲームのデジタル配信が増えることによって、日本のゲームはどのように態勢を整えなければならないのかという問題意識から、ゲームメーカーやプラットフォーマーも経営トップにインタビューを敢行し、それを記事にしているというものです。第1回連載は「若い層を獲得し、ロングセラーを活性化するカプコン」というタイトルで、カプコン 代表取締役社長 最高執行責任者である辻本春弘(つじもとはるひろ)さんのインタビューが掲載されています。
https://trendy.nikkeibp.co.jp/atcl/column/16/032800001/041300003/
今回の記事でわかることは、
1.ロングセラータイトルに若いファン層をどう取り込んだかについて
2.課題だったモバイルコンテンツのヒットについて
3.グローバル化するゲーム産業に対するカプコンの姿勢
この3点でしょう。今回の記事は3番に焦点を合わせてみたいと思います。Steamやスマホゲームなどの登場によって、国や地域を問わずユーザーの元にゲームを届けられる環境が整った現在のゲーム市場に対して、カプコンがどのように取り組もうとしているのかについて迫りたいと思います。
あらゆる文化に寄り添うゲーム作り
ゲーム内容のグローバル化、ローカライゼーションは近年ますますその重要性が確認されています。ストリートファイターシリーズは海外でも人気であり、特にeスポーツの分野では目玉種目として多くの大会で採用されています。ロングタイトルというのはその企業のブランドイメージにも直結してきます。今回当記事で取り上げたコラムでは、ますますグローバル化するゲーム市場において、カプコンがいかに真剣な姿勢を見せているかがうかがえます。インタビューを引用させていただきます。
(引用開始)
今回新たに「ラシード (RASHID)」という中東のキャラクターを追加したことです。世界中にハードが広まった今、ネット環境に恵まれている国であれば、配信でさまざまなゲームを購入できます。特にPS4、Xbox Oneになってから中東でのハードの売れ行きが好調な上、ネット環境も整っているのでマーケットとしての魅力が高まっています。今や中東は欧州の主要国に匹敵するくらいの市場規模ですから。そうしたこともあって、『ストリートファイターV』では中東のキャラクターを加え、アラビア語にも対応しました。
(引用終わり)
ゲームのグローバル化と聞くと言語のローカライズばかりに焦点が当てられてしまいますが、ゲーム内容もあらゆる文化圏で受け入れられるような工夫が必要です。要するに、ゲーム内容のカルチャライズです。必要になってくるのが海外の文化を理解することです。宗教と現在の文化を比較すると、何がタブーで何が良いとされているのかということがわかると思いますので、言語だけでなく文化的な側面からの学習が、開発者にも求められてきそうです。
eスポーツを視野に入れたローカライズ
記事筆者が個人的に興味関心のあるeスポーツについても同上コラムで取り上げられています。
(引用開始)
さらに「ストリートファイター」シリーズは前作から「e-Sports」にも非常に力を入れており、『ストリートファイターV』でもe-Sportsにマッチしたゲーム内企画を積極的に売り込んでいます。やはりそれぞれの国や地域を代表するようなキャラクターを入れ込まないと、各国で盛り上がりませんからね。キャラクターもグローバル化です。
(引用終わり)
ここでもカルチャライズが重要視されています。イギリスでは次のオリンピックに合わせてeスポーツの大規模な大会を開催しようという動きがあります。ますます盛り上がりを見せるeスポーツですが、自国のゲームをもしeスポーツに使ってもらいたいと思う場合、こうした多くの世界の人に受け入れられる要素を盛り込まなければなりません。今後は格闘ゲームやFPSなど、キャラクターの設定などがゲームの本質に大きく関わってこないジャンルのゲーム開発では、カルチャライズを視野に入れた開発がどんどん進んでいくでしょう。
日本語の市場は日本だけ
日本語で日本人向けにゲームを売るということばかりを気にしているようでは、ユーザー数拡大につながりません。日本の音楽業界全体が元気を失い始めているのも、グローバルな視点が無いからだと指摘する声もあります。要するに、扱っている言語によって市場が限定されるのです。日本語で歌われた曲はそれだけで日本だけでしかクリティカルに売り上げを上げることはできないでしょう。しかし英語で歌われた場合、世界に何カ国もある英語圏の国々でセールスの機会があるのです。そして言語の壁をクリアしても、文化に即したものでないと売れません。日本の音楽産業は海外の流行に対しても鈍感で、今日本で流行っているEDMという音楽ジャンルは、海外では3年ほど前にピークを過ぎました。言語の壁は大きいです。少なくとも英語に対応できなければ市場拡大は望めないでしょう。日頃の開発に忙しい上に勉強をしろというのか!と嘆く方もいらっしゃるかと思いますが、自分たちの手で無理ならローカライズを業務委託してくれる企業へその作業を発注すれば済む話ですし、今後そうしたことに開発費を使うことがますます重要になるかと思います。今後はゲームのカルチャライズアドバイザーなどが現れ、ゲームと文化に関する専門家などが活躍し出したりすると面白いかもしれませんね!
記事を読んでいただきありがとうございました!