ゲームに対する正しい認識とは何か
学校教育とデジタルゲームは水と油のようなものである印象があるかと思います。我が子が勉強できない一番の原因を、テレビの視聴やアニメマンガの見過ぎ、ゲームのやりすぎだと思われている方も多いのでは無いでしょうか。『「学力」の経済学 』の著者、中室牧子さんのNews Picks内の連載コラム「科学的根拠から考える教育&子育て相談」の中では、次のようなことが述べられています。
https://newspicks.com/news/978234/body
(引用開始)
私たちの研究を通してわかったのは、ゲームをやめさせても、子どもの問題行動や学習時間にはほとんど影響がない、ということです。もう少し正確に言うと、ゲームは子どもの問題行動や学習時間に負の因果効果をもつことはもつのですが、その効果は極めて小さいのです。
たとえば、1時間のテレビやゲームをやめさせたとしても、男子については最大1.86分、女子については最大2.70分しか学習時間が増加するにすぎないことが明らかになりました。
子どもに対してゲームの時間を制限しても、子どもは自ら机に向かって勉強するような子どもにはなりません。
(引用終了)
勉強をしない一番の理由はアニメゲームマンガをやっているからではありません。現段階でゲームのプレイ時間に関して公表されている論文などを読んでみても、常識的な範囲であれば、「悪影響はさほど無い」とされています。そもそも、「ゲームがあるから勉強に支障が出るのか」ということなのか、「勉強が苦手な人がゲームを好むのか」、ということかによって話がだいぶ違ってきます。中室さんの主張によれば、学習に取り組む姿勢が本質的に変わら無い限り、子どもの学習時間が伸びたり、学習の質はあがらないとしています。
ゲームによる悪影響は無い?
テレビゲームとすぐに結びつけられるのは犯罪です。ゲームに限ったことではありません。アニメゲームマンガは1988〜89年にかけておきた「東京・埼玉連続幼女誘拐殺人事件」の容疑者である宮崎勤容疑者の自宅から、大量のビデオテープの大半がアニメであったという報道を皮切りに、宮崎容疑者の「マニア」「おたく」というキャラクターと、ストーカーや通り魔など、異常性が認められる重大な犯罪と関係があるように印象付けられるようになりました。しかし、青少年による凶悪犯罪は減少傾向にあります。アニメの放送本数は宮崎容疑者の事件が起きた88年当時よりも急激に増加しているし(参考:https://ci.nii.ac.jp/naid/120005419045)、2015年3月にはスマートフォンの普及率も29歳未満は一般世帯で94%を越え、ゲーム業界の勢いは止まるところを知りません。にもかかわらず青少年の犯罪が減少傾向にあるということは、アニメゲーム漫画がマクロ的に犯罪率に与える考えられる悪影響はほとんど無いと言えるのでは無いでしょうか。
悪影響としてあげるならば、「長時間に及ぶ」という大前提があるとするなら、ゲームプレイによる視力低下や運動不足などによる生活習慣病リスク上昇、あるいは依存症状態に陥るということです。しかしこれは別にゲームに限ったことではありません。長時間の座位行動自体が身体に悪影響を及ぼすことが明らかになっていますし、依存症はゲームに限らず様々なもので起こり得るものです。お酒やタバコ、子どもも楽しめるものでしたら甘いお菓子と同じで、少量ならば良いですが、依存状態になれば身を滅ぼします。日本全国がスマートフォンによるインターネット中毒状態であるという自覚もないままゲームへの悪影響を叫んでも意味がありません。
犯罪や依存症を防ぐゲームプレイ方法とは
ゲームによる犯罪や異常行動をどう防ぐのか?ということに関しては、様々な要因が絡み合うので一概には言えません。ゲームを心ゆくまで楽しみたいという方は、ゲーム以外の趣味や楽しみ、生きがいを自分の中に持つことは依存症防止に効果があるのではないでしょうか。パチンコ依存症の治療などにも、いつもパンチコをしている時間に別のことを行うという治療を行っているクリニックなどがあるそうです。また、周囲の人々がゲームをしている人たちとどのように普段接しているかということも重要でしょう。家族内でなければ、友人間でゲーム依存症になりそうな人たちに対して遊びに誘ったり、交流をしたりすることによって、ゲーム以外に楽しいことがあるという認識を与えることが重要です。
フィクションと現実の違いが分からない子どもが増えるからゲームは規制するべきだ!とする意見もありますが、それはしっかりと子どもに向き合い、「アニメゲームマンガで起きた出来事はすべてフィクションなんだよ。現実とは別なんだよ。」ということを話していくことが重要でしょう。子どもたちに「ゲームをやりたい理由」と「ゲームをやることによるデメリット」を話させることも良いかもしれません。どちらにせよ、子どもたちがやっているゲームに大人たちも向き合うことが重要になってくるのです。画一的な教育論やゲーム規制派の意見に惑わされず、「自分の子どもの場合はどういう風にゲームと向き合わせれば良いか」ということを考えなければならないと思います。安易に規制に走るということは、「ゲームが好きである子ども」という存在自体を遠ざけることになりかねません。それが一番子どもにとって傷つくことであり、危険なことなのではないでしょうか。
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