深刻化する子どもの貧困
経済格差は日本の課題の一つです。特に子どもの貧困格差については看過できない状況が続いています。朝日新聞は「シリーズ 子どもの貧困」を連載するなど、子どもと貧困、経済格差についての取材を行ったコラムを積極的に発信しています。その朝日新聞が「朝日新聞デジタル」に、本日2時にアップしたニュースが「子どもの貧困格差が、先進41カ国中34位」というニュースです。
https://www.asahi.com/articles/ASJ4D6305J4DPTFC014.html
(引用開始)
子どものいる世帯の所得分布(推計値)をもとに、下から10%目の最貧困層と真ん中の標準的な子どもとの所得格差が大きいほど、貧困の深刻度が高いとして、格差の小さい順に、欧州連合(EU)または経済協力開発機構(OECD)に加盟する先進41カ国を順位付けした。
上位の北欧諸国では、最貧困層の子どもの所得は、標準的な子どもの6割ほどだった。日本では最貧困層の子どもは、標準的な子どもの4割に満たない。
(中略)
1985年から2012年にかけ、格差は拡大している。真ん中の所得が約177万円から211万円に上がったのに対し、最貧困層の所得は90万円から84万円に下がったためだ。
(引用終了)
最貧困状態にある子どもたちの生活ぶりについては、実際に朝日新聞の特集をご覧になり、ご自身でこの問題について真剣に考えてみていただきたいです。風呂に入れない、食事も取れない、高校への学費も捻出できなかったために進学をあきらめたり、入学できたとしても生活費を稼ぐためにバイト漬けの毎日で勉学に励むエネルギーが出ないなど、様々な要因が絡み合う根の深い問題です。そうした子どもたちはおそらく、アニメゲームマンガを楽しむ余裕すら無い状況で生活をしています。クリエイターやアニメゲームマンガを「当たり前のように」楽しむことができている方々は、この問題をどのように捕らえますか?
私は今回、アニメゲームマンガ業界発展という視点よりも、素晴らしいアニメゲームマンガに出会って、それらに元気や感動をもらえる子どもが少しでも増えれば良いという視点から記事を書かせていただきます。
放課後の遊び
貧困の子どもたちと普通の子どもたちの問題を考えるとき、私が一番興味を持ったのは「遊びの格差」でした。一般的に子どもたちは放課後、どこでどのような遊びをしているのでしょうか。そのことを考える上で役に立つ資料が見つかりました。少し古いデータですが、2007年に行われた放課後の遊びに関するアンケート調査と、2013年に行われた放課後の過ごし方に関するアンケートです。
さわやか福祉財団「放課後の遊びについてのアンケート調査」(2007年)
https://sawayakazaidan.or.jp/asobi_hiroba/data/part02.pdf
ベネッセ教育総合研究所「放課後の生活時間調査 子どもたちの時間の使い方[意識と実態]」(2013年)
https://berd.benesse.jp/up_images/research/2014_houkago_all.pdf
「さわやか福祉財団」が2007年に行った調査ではテレビゲームを自分の家や友達の家で遊ぶ子どもたちが多く、ベネッセが2013年に行った調査では、テレビやDVDを見る時間やゲームをする時間は減ったが、携帯電話やスマートフォンを使う時間は増えたという結果になっています。子どもが携帯電話やスマートフォンを使って何をするのかといえば、おそらくSNSかアプリのゲームであると推測すれば、ゲーム自体に触れる機会は以前よりも増えているのでは無いでしょうか。そう考えると、スマートフォンを持ってい無い子どもたち、テレビゲームを持ってい無い子どもたちは少数派です。テレビゲームマンガなどは、子どもたちの遊びを形成する主要なものになっています。金銭的な格差によって、楽しみたくてもアニメゲームマンガが楽しむことができない子どもたちは、不特定多数いるのではないでしょうか。
娯楽と捕らえられている限り貧困の子ども供達には渡らない
アニメゲームマンガは娯楽と考えられています。娯楽的側面は確かに強いですし、それがなければこれほどまで日本の文化に浸透しなかったと思います。しかし人間はその娯楽の中から、人生において重要なエッセンスを感じ取ったり、感動したり、主人公たちに共感したり、ゲームだったら現実にはあり得無い空間で自在に動き回ることができる感覚を与えてくれます。娯楽的側面ばかりで捉えてしまうとネガティブな要素が目立ってしまいますが、アニメゲームマンガが我々に与えてくれるものはネガティブな影響ばかりではありません。依存状態にならないか、運動不足になるのではないかという懸念の声もありますが、人間はどんなものにでも依存状態になる可能性があります。アニメゲームマンガは臨場感を強く与えるコンテンツですから、もしかしたら他のものよりそういう影響があるのかもしれません。しかし、子どもたちの発達段階でアニメゲームマンガを与え、その結果依存状態になってしまったのであれば周囲にいる大人たちの責任もある程度考えられるでしょう。のめり込み過ぎそうな子どもたちと会話し、なぜそのような心理状態になるのかを掴むのも大人の役目です。そうした周囲の目を整えれば、より多くの子どもたちに、アニメゲームマンガというコンテンツでしか味わえ無い感動や体験を与えることができると思います。そしてそれは大変に良いことだと私は信じています。
より多くの子どもたちにアニメゲームマンガを届けるためには
アニメやマンガはレンタルサービスの利用や、児童館や図書館などに置かれたりしているため、無料で楽しめる機会はあるといえばあります。しかし児童館は「児童福祉法第40条に規定する児童厚生施設の1つで、地域において児童に健全な遊びを与えて、その健康を増進し、又は情操をゆたかにすることを目的とする児童福祉施設」(厚生労働省:「児童館について」より) であり、その目的から外れるとした作品は置くことができませんし、図書館も同様に作品の選書は学習施設であるという前提で行っていますから、好きな作品を好きなだけ選んで置くことはできません。そうなるとTSUTAYAなど民間企業のレンタルサービスの利用を考える他ありません。またゲームのレンタルは日本では1984年の著作権法改正以降は事実上禁止されている上に、ビジネスとして成立しないことが多いため普及していません。アメリカの図書館ではテレビゲームの貸し出しを行っている所もありますが、歴史学や文化研究のための資料として選出されたものであるためこちらも自由にゲームを取り扱ったりすることはできません。
娯楽という視点からアニメゲームマンガを見てしまうと、公共性の高い施設において様々な作品を設置することは困難です。TPPの成立によって表現規制に実際どのような影響があるかも分かりません。さらに表現に対する規制が厳しくなる可能性もあります。そうなれば、児童館や図書館などから不適切な漫画を撤去せざるを得なくなったりする可能性もあります。
アニメゲームマンガ業界が発展し、より良い作品が生まれ、子どもであれば誰でも0無料であらゆる作品を楽しんだりゲームで遊んだりできる施設を作ることができるかもしれません。日本のすべての人たちにアニメゲームマンガを届けるためには、日本における貧困問題と子どもの遊びについて、もっと深く考える必要があるのではないでしょうか。ありきたりな問題提起で終わりになってしまい申し訳ありません。
最後までお読みいただきありがとうございました。