ゲーム×AI VR8兆円を超えるAI50兆円市場の可能性とポケモンコマスターからみるゲームの可能性

2016年4月12日の日経新聞朝刊には、以下の記事が掲載されていました。

nikkeiAI技術の黒子役、米エヌビディア快走 50兆円市場を開拓

画像処理半導体(GPU)大手の米エヌビディアが快走を続けている。大量のデータを同時に処理し、ゲームのCG(コンピューターグラフィックス)をスムーズに動かす技術を蓄積してきた同社に人工知能(AI)の研究者らが着目。自動運転など向けに、10年間で50兆円を超える事業機会をもたらすとされる最先端技術に欠かせない黒子役となりつつある。

今回は、AIとゲームの関係性について考えてみたいと思います。

yx_fami_01ゲーム業界の現在

コンシューマーゲームからスマホゲームへ、ゲーム業界はその舞台を大きく移しました。「ファミ通ゲーム白書2015」によると、国内ゲーム市場規模(ハード・ソフト合計、オンライン含む)は過去最高の1兆1925億円になったとの推計を出しています。しかし、市場の内訳を見てみると、家庭用ゲームは、ハード・ソフト合計で前年比11%減の4039億円に落ち込む一方で、オンラインプラットフォーム(スマホ/タブレット向けゲームアプリ、フィーチャーフォン、PCオンラインゲーム)は13%増の7886億円に拡大しています。近いうちにオンラインゲーム市場はコンシューマーゲーム市場に2倍の差をつけることになるでしょう。

また、世界に目を向けてみると、日本の市場が世界のゲームマーケットのごく一部であることもわかります。ゲーム調査会社Newzooの「グローバルゲームマーケットレポート」(2015年版)によると、世界のゲーム市場は2014年の836億ドル(約10兆1200億円)から2018年には1133億ドル(約13兆7000億円)に成長すると予測されています。地域別では中国、アメリカが220億ドル以上の市場を形成しています。1ドル=108円で計算すると、中国、アメリカにそれぞれ2.37兆円以上、日本の2倍以上の市場規模があります。日本のゲームメーカー、ゲームパブリッシャーも海外進出に意欲的な会社は年々増えています。

shutterstock_93523195知られざるAI市場

そこで、今回の題目でもあるAIについてですが、AIについてそこまで大きな可能性を感じていたゲーム業界関係者はそれほど多くないと思います。ゲーム上でAIがキャラクターを動かすというぐらいの認識の方がほとんどではないでしょうか。しかし今回の話はいわば、ゲームの上にAIが上り立つという話でもあります。

AIの可能性はゲームに留まらず、自動車の自動運転や医師の診断支援などあらゆる分野に広がっており、今後10年間で5千億ドル(約54兆円)の市場を生み出すとも見られています。今年からはグーグルやトヨタ自動車もAI開発に取り組むとのことで、開発人口も4年前から2倍に膨れ上がっています。

vr_headsetゲームの未来はVRかAIか

ゲーム業界でいうと、「PlayStation VR」を始めとしてVRに熱い眼差しを向ける企業が急激に増えています。PlayStation VRが10月発売とはっぴょうされ。現在、SCEワールドワイド・スタジオ(SCE WWS)では160本以上のタイトルを開発しており、発売から2016年末までにサードパーティタイトル含め、50本以上のタイトルを発表する予定となっています。参入メーカーも発表され、全世界で230社以上、日本メーカーの参入は計34社とされています。

記事の中でも取り上げられていたエヌビディアもVRを含むゲーム事業が売上の半数を超えています。しかし、CEOのファン氏からもAI関連が上回る可能性があるとの言葉も出ています。同日の日経新聞には、VR関連の記事も掲載されていましたが、その中でもVR関連市場は2020年までに8兆円との試算が出ていると書かれています。VRもゲーム留まらない可能性を秘めていますが、今後の時代を考えるのであれば、AIに可能性が大きくあるのではないかということも数字から見えてきます。

pokemonゲームとAIの可能性について

とはいえ、ゲームとVRの関連性以上に、ゲームとAIの可能性の繋がりは見えづらいものがあると思います。しかし、ゲームの中にはAIを前面に押し出したゲームの姿も見えてきています。

2016年3月、ポケモンのスマートフォン向けゲームアプリとして「ポケモンコマスター」が発表されました。このゲームは「ポケモン×AI」と一番のウリにしています。位置情報ゲーム「Ingress」(イングレス)のNianticがポケモンの新作ゲームアプリ「Pokémon GO」を開発中とのことからもわかるように、ポケモンは最新ハードで新作をリリースし続けるにとどまらず、ポケモンと世界的に新しい技術を結びつけることに挑戦しています。2016年春にサービス開始予定のゲームということで、実際に手にとって遊べる日もそう遠くありません。ゲームの未来という意味でも50兆円市場の一端という意味でも注目が集まるところです。

AIともなると、通常のゲーム開発やVRとは違った技術が必要になり、それもグーグルやトヨタといった世界に名立たる企業との競争にもなりますが、だからこそそこに可能性を感じるのであれば、早期参入、早期研究は戦略的に考えても間違いではないはずです。現に、ポケモンコマスターの開発に携わるHEROZ株式会社は先駆者利益を得た実例とも言えるでしょう。ぜひゲーム、ITに携わる方は、これを機会にAIの可能性について考えを広げていただければと思います。

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