今回は、アニメ業界の2大問題「人材不足」「経営基盤の脆弱性」について考えてみました。この二つの問題に関しては、今後のアニメ業界の発展において乗り越えていかなければならない問題です。
アニメ業界の2大問題
来年の2017年は、日本のアニメーション制作が始まって、ちょうど100周年となる節目の年となります。それにあたって、日本動画協会は、「日本のアニメーション100周年プロジェクト」という企画を進めています。このプロジェクトの推進座長のアニプレックスの植田益郎氏は、今のアニメ業界が抱える人材不足と経営基盤の脆弱さについてこのプロジェクトで解消したいと考えています。
局所的なアニメ業界
(左の画像は日本動画協会より)
人材不足と経営基盤の脆弱性は、お互いが関係しあって悪くなっています。経営基盤がしっかりしないから、低賃金になり、アニメーターになりたがらないということは想像しやすいでしょう。ただこれに加えて、なりたくてもなれないアニメーター志望の人が多数おります。現在、アニメ会社やアニメスタジオは全国に700社ほどあるといいます(日本のアニメ制作会社は600社以上 東京西部に集中)。ただそのうちの約600社が西東京にあると言われています。一方で賃金に関して、1年目のアニメーターは動画を担当します。そして、動画の平均年収は、約110万円になります。アニメーターは出来高制が多いため、うまくて早ければこれ以上になりますが、遅い人はこれ以下となります。そのため、たくさん量をこなすためにたくさんの時間をかけています。下手したら近所のコンビニでフリーターをしていた方が、労働時間も短く、年収がいいでしょう。しかし、それでもアニメ業界を目指す人は少なくありません。今運営している求人サイト「ラクジョブ」でもアニメーターは、人気の職種の一つで、多くの会員登録や応募があります。
ただ一方で多くのアニメ会社の面接の時によくする質問が、「あなたは実家暮らしですか」ということです。アニメーター1年目は、かなり厳しいことになるための配慮からくる質問ですが、この時点で、援助の得られない西東京周辺以外の地域のアニメーター志望の求職者は除外されてしまうことになります。ラクジョブでも「〇〇県にあるアニメ会社を知りませんか」という質問も多く寄せられるため、潜在的な人材はまだまだある印象です。
アニメ会社、スタジオの地方進出
時より、インターネットの記事などで話題になるのが、大手アニメ元請け会社の地方のスタジオ設置です。そして先日も、「新世紀エヴァンゲリオン」などのヒット作を手がけた「ガイナックス」が神戸市の長田区の「神戸アニメストリート」に、関西の制作拠点となる「GAINAX WEST」を設立すると発表されました。
アニメ制作会社、神戸・長田に進出 ガイナックス
https://www.kobe-np.co.jp/news/bunka/201603/0008939309.shtml
他にも地方で活躍しているアニメ会社としては、
「京都アニメーション」 京都
「P.A.WORKS」 富山
「ufotable」 徳島
「WHITE FOX」静岡
「Production I.G.」新潟
などがありますが、東京以外では、県内にアニメスタジオがあるかないかのレベルです。そのため、人材不足の解消には、全国にアニメスタジオを設立させることが大切ではないかと考えます。
地方分散から必要となること
ただ、全国にアニメスタジオを設立するにあたって、問題になるのも人材の確保です。いくら地方に人材のニーズがあったとしても、アニメーターとしての最低水準というものがあります。そのためにも、地元のアニメーターの育成を視野に入れた進出が必要となってきます。また、アニメの制作は、一つの元請け会社から多くのアニメ会社の制作協力によって成り立っていることが多いです。いい意味でも悪い意味でも、西東京に固まっているということもあって東京のアニメ会社は、やりとりがしやすくなっています。とくに作画に関しては、紙媒体が多いため、必然的に近くのアニメ会社同士でしかできません。先にあげた地方で有名な会社は、自社内で完結できたり、デジタルでのやりとりなどを確立しているため円滑に制作できます。その意味でも、地方に進出する際は、作画を含めた全ての工程をデジタル化し、日本全国どこでも通信でやりとりができる環境を整えることが必要となってきます。また、東京においても、デジタル化は、制作時間の短縮とコストカットにつながるでしょう。あとは、紙と鉛筆で慣れ親しんだアニメーターが円滑にデジタルへ移行できるための設備と、デジタルソフトでの紙と鉛筆の質感の再現性ではないでしょうか。
今後のアニメ業界
人材不足や経営基盤の改善を考えた上でも、地方進出や全行程のデジタル化は必要となってくるでしょう。そのために、地方の行政や企業、住民との協力、専門学校のような教育機関との連携が重要となってくるでしょう。
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