遊技機業界の慣習
記事を読んでいただきありがとうございます。今日はパチンコ、パチスロを含んだ遊技機全体の話です。これまでのように問題提起というわけではないですが、最近つとに遊技機業界の仕事の話や慣習について触れる機会が増えてきたので、今回は軽くコラムとして慣習の一つについてお伝えしていこうと思います。
現在遊技機業界の開発においては、これまで何度も取り上げているように新規のプロジェクトがほぼ進まない状況が出来上がってしまっています。規制の影響、釘問題の影響などなど様々な問題が絡み合って現在の状況が生まれているのですが、これまで取り上げてこなかったポイントの一つとして駆け込み需要の存在があります。駆け込み需要とは何かというと、ある期間を過ぎると検定の方法が変わりこれまでの仕様で作った遊技機が適合試験に合格しなくなるため、その締め切り前に保通協の適合試験申請が一気に増えるというものです。事前に告知されることがほとんどなので、適合試験の試験内容や適合基準が変わる前には、そういった駆け込みの需要がよくあります。そんなときは納期が決まっているうえに絶対にずらすことができないので、一気に人数を投下して終わらせられるのなら何としても終わらせるために、遊技機案件が一気に出回ることがありました。
今回も実は駆け込み需要自体はあったのですが、現時点ですでにそのピークは過ぎています。今はある程度最終調整に入っている段階で、すでに適合試験をクリアして新台の販売計画に基づき流通し始めているないし、その準備をしている期間だと思います。ではなぜ駆け込み需要が生まれたのでしょうか?内規の変更はパチンコにおいて7月ごろにあるという話が出ていて、その前にも駆け込み需要が発生する可能性がありますが、実は駆け込み需要が発生するのはそれ以外の場合もあります。
新台入れ替えのできない時期とは
それが今回紹介する新台入れ替えのできない時期です。新台入れ替えのできない時期は法律化されているわけではありません。これは業界全体で自粛期間として定め、中古の台の入れ替えや自主規制による社会的不適合機の撤去においても一切代の入れ替えをしなくなる時期でもあります。それに関連する記事としてよく引用させてもらっているパチンコ業界誌『遊技日本』から下記の記事が掲載されていました。
引用開始
伊勢志摩サミットは、今年5月26日と27日に三重県志摩市で開かれる。昨今の世界的なテロ頻発という背景も踏まえ、治安維持活動に当たる警察の業務軽減に協力することが、入替自粛の実施目的。パチンコ業界としてきちんと対応する必要があるという認識により、理事会では、入替自粛の実施自体は決まっ
た。但し、自粛期間については、地域毎で事情が多少異なることから微調整が必要とし、2月12日開催予定の臨時理事会で、再度協議することとした。
この点について理事会後の記者会見で阿部恭久理事長は「当初予定していた自粛期間は1カ月程度。しかし、地区によっては関係閣僚会議の開催に伴い、
自粛期間の延長等が必要となり、2カ月程度の自粛が必要となる可能性もある。あまり期間を長く設定すると、入替を嫌がっていると見られかない。高射幸性遊技機を可及的速やかに入れ替える必要もあるなか、そのあたりのバランスを考える必要があり、再度、話し合うこととした」と話した。
引用終了
パチンコ業界誌『遊技日本』 入替自粛、期間は継続協議/全日遊連 より抜粋
自粛期間とはサミットの開催時期に合わせて設定されます。サミット以外でも自粛する場合があるのですが、それはなぜなのでしょうか?それは引用部分の冒頭に記載されているとおり、治安維持活動を行う警察の業務軽減のためです。新台入れ替えと警察に何の関係があるのかについてぴんと来た方は察しがよいです。それは以前の記事でも取り上げましたが、パチンコやパチスロの台を販売するためにはいくつかのステップをクリアする必要があります。その必要なステップの最後としてホールに台を設置する前に警察によるチェックを受ける必要があります。そのチェックをクリアすることでホール側は初めて台を設置して営業することができます。
警察の業務軽減のために
要するにパチンコやパチスロの新台を購入し、設置しようとすると警察が必ず動く必要があるわけです。ところがサミットで警察の多くの人員が今回でいえば伊勢・志摩方面に出張する中、入れ替えによりさらに手間が増えれば地元の治安維持や取り締まりなど業務上に支障をきたすことも考えられます。そのため、業界団体自らが通達を出すことにより警察の手間が増えることを未然に防ぎ、お互いに良い関係性を維持していこうという考えがあります。国内でサミットが行われると毎回このような自粛期間が設けられることになりますが、それ以外にも警察の人員が多く何かに割かれることにより通常の業務に支障が出そうな場合は自粛期間を定めて警察の業務軽減に協力しているのです。
駆け込み需要の話に戻ってくるわけですが、要するにそういった自粛期間が発生すると台の入れ替えが発生せずいくら試験に適合しても実質販売することが不可能となります。ですのでメーカーとしてはその前に販売をしたいと考えますし、ホール側もなるべくいい台を事前に確保して自粛期間に臨もうと考えます。それが駆け込み需要が発生するもうひとつの理由です。今回のように業界の慣習を知っておくだけでも話をするときに役に立つこともあると思いますので、今後もこういったコラムは継続して取り上げていきたいと思います。
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