今年最初に話題となった、グラブルガチャ問題。グランドブルーファンタジー自身が人気コンテンツだったこともあって、また消費者庁から規制がかかるんじゃないか?という話題は2月になっても続きました。噂だけはあるものの、まだ直接的な動きは無く、そんな中で先日発表されたのが「ガチャ個別出現確率の表示」です。ただでさえ人気アプリのため、少しの動きでも注目されるグランブルーファンタジー。実際、確率の表示は今後業界にどのような影響を与えるのでしょうか?
弁護士からも「法律的に見てアウト」
今回のグラブルの件、以前もまとめましたが、そもそもこれには2つの問題が重なり合っています。
1.特定のキャラクターだけ出現率が目立って低かったこと
2.その特定のキャラクターがいないと遊べないイベントがあったこと
「コンプガチャ問題」と言われるのは1と思われがちですが、実際は2です。ある一定の意匠(アイテムやカードなど)を合わせないと何かが手に入らない、更にそれの意匠を手に入れるのが有料であるとなった場合、景品表示法違反となってしまいます。今回は「アンチラ(キャラクター)が手に入らないとイベントが遊べない」という問題が起きました。これは、弁護士など法律に詳しい人に聞いても「特定のキャラクターが手に入らないとイベントが遊べない、というのは絵合わせに該当するので法律的にアウト」ということです。1の「キャラの出現確率が低い」ことに関しては、確率を操作していたのでは?というユーザーからの声も出ていますが、これに関しては確認が取れず確率論でしか話ができません。今後明らかにゲーム制作者が注意すべきは、運営の中に今回の様な「絵合わせ」的イベントを埋め込まないこととなるでしょう。
プレイヤー側からすれば「ガチャの確率がわからないので、次々と課金をしてしまう」ことの方が問題だと感じますし、今回の個別出現確率表示もユーザーのガチャに対する不満を解消するための処置と考えられます。アタリの確率が表示されるということは法律で義務づけられてはいません。(射幸心を煽りすぎないように、という規制はありますが、これに関しても厳密な規定は無く、特にパチンコやパチスロといった遊技機では、規制の都度定義されている状態です。)
全てのゲームにガチャ表示は必要となるのか?
大手だからこそ起こってしまった今回の問題ですが、果たして今後も全てのゲームでガチャの確率表示は義務化されるのでしょうか?そもそもグランブルーファンタジーは、キャラクターの提供が一定であることを示すために「ガチャ履歴」(他のユーザーがリアルタイムでどのようなアイテムをガチャで出したか表示されるシステム)を設けたりと、ユーザーの不安をいたずらに煽らないよう配慮していました。今回はこの「ガチャ履歴」に関してもユーザーから疑念が出てしまい、撤去することとなっています。
どうしても「炎上」案件となると、ユーザーもゲーム提供側も敏感になってしまいますが、少なくとも今回明らかにまずかったのは「絵合わせ」に該当するゲーム運営の方だったということをまずは認識しておくことが大切です。ガチャ表示は今回運営会社が自主的にユーザーのために行ったことであり、義務化されたことではありません。「確率開示は業界の流れになるのでは」という声もありますが、実は確率開示については一部で自主的に開示が行われているのです。
ガチャ規制に最も早く動く業界内団体
ゲーム業界ではよく知られている団体の1つに、「JOGA(日本オンラインゲーム協会)」があります。現在、会員・準会員合わせて30社が所属しており、まだソシャゲが出てくる前からブラウザ上のオンラインゲームに関してユーザーとメーカーのためにガイドラインを作るなど長く活動しています。会員を見ると昔からブラウザゲームに関わりを持っていた会社が多いのですが、ソーシャルゲームのSAPと呼ばれるメーカーの名前も少し見受けられます。JOGAはスマホゲームもオンラインゲームの1つと捉え、2012年にガチャ規制が問題となった際に下記のようなガイドラインを制作していました。
JOGAガイドラインを作成、公表いたしました。(日本オンラインゲーム協会)
https://www.japanonlinegame.org/press_view.php?id=202
こちらでは下記のような基準を設け、会員や他のゲームメーカーに対し呼びかけを行っています。
・アイテム獲得確率を表示すること
・レアアイテム獲得確率が1/100以上であること
・レアアイテム獲得までの推定金額は5万円以下
・ハズレアイテムは禁止
最も、これは単なるガイドラインであり罰則規定や法的な拘束力も無いため、ユーザーに快適なゲーム体験をしてもらうために定められたものではあります。「〇十万円の課金をした」というような話が今でも多いソーシャルゲームにとってはなかなか厳しめの基準ではありますが、逆にこれが功を奏して、PCオンラインゲームは今でも大きな炎上問題が起きていないのかもしれません。
確率表示はこのように自主団体での声かけはされていますが、ゲームアプリ全てにはなかなか反映されていないのが現実です。しかし、ソーシャルゲームを息の長いコンテンツとしてこれから20年、30年と続けてゆくには、こうしてユーザーと制作側が互いに気遣い合ったゲーム作りをしてゆくことが大事なのでは無いでしょうか。