ソーシャルゲームブームが起きて、大ヒットしたゲームやゲームアプリは複数あります。KONAMIの「ドラゴンコレクション」に始まり「パズドラ」「モンスト」「白猫」と、どれも短い期間に一時代を築いてきました。先日、DeNAとグリーの決算を比較し、それぞれがどういったビジネスへ向かうかの分析を行いましたが、今回は「ヒットゲームアプリ」を作ったガンホー・オンライン・エンターテイメント、ミクシィ、そしてコロプラを取り上げます。それぞれの決算(短期決算)から、ヒットアプリが会社に与える影響と、それが影響を与えられる期間について見てみましょう。
参考
ガンホーは今月2日、2015年12月期決算を発表しました。2015年度の売上高は前期比10.8%減の1,543億円(前期は1,731億円)、営業利益は同23.2%減の724億円(前期は943億円)という結果が出ました。前々期は売上が1,630億円、営業利益が912億円だったため、かなり大きく下がったことがわかります。結果としては減収減益ですが、パズドラの海外展開と運営受託のビジネスで地盤を強くしようとしています。他に、サモンズボードの海外展開、やディバインゲートのアニメ化、PS4プラットフォームを含めた新作リリースなどが控えています。
図は、ガンホー・オンライン・エンターテイメントHP 財務・業績ハイライト(連結)より抜粋
ミクシィは高収益が続いており、売上は549億3300万円(前期同時期より64.9%増)営業利益は236億3000万 (前期同時期より51.7%増)と増収増益です。理由として看板アプリであるモンストの業績と、同タイトルの3DS版の売上が挙げられています。海外にも既に進出しており、プレイ人数は好調な様子。他にゲームではありませんが、チケットプラットフォームの事業などウェブサービスも伸びました。チケットや年賀状といった、季節に影響する事業です。
新規のタイトルとして「ブラックナイトストライカーズ」も先日発表されました。3Dっぽい絵柄が特徴的なアクションゲームです。こちらがどう伸びるかまだ見えませんが、海外展開も視野に入れたグラフィック、ゲーム作りであろうことは予想されます。
図はmixi 2015年度第3四半期 決算説明会資料 より抜粋
コロプラの第1四半期決算説明会資料によると、売上高は232億円、営業利益は104億円と好調です。白猫プロジェクトの勢いが1つの原因として推されています。海外展開もアジアを中心に伸びており、営業利益だけであれば前期同時期の2倍になっています。CMの効果も大きいようなので、今後はCMから流入した顧客をどう維持してゆくかが課題となります。
コロプラは現在一番人気のある「白猫」の他にも、ランキング1位には行かないまでも「黒猫」などの有名ヒットタイトルを複数リリースしています。決算資料にもある通り、ヒットするアプリを定期的にリリースして売上を底上げするという、言うは易し、行うは難しを続けているのがコロプラの強みでしょう。
図は、コロプラHP 平成28年9月期 第1四半期決算説明会資料 より抜粋
ヒット作品は持って3年?
今回、ガンホーの減収減益は意外な気もしますし、「やっぱり」という気もします。パズドラはもはや不動のアプリ1位ではなく、モンストや白猫と首位を争っています。以前ほどの盛り上がりを見せているとも思えず、波が収まってきた雰囲気を感じます。ガンホー自身も「パズドラのプレイヤーが上級者になってきて、課金しなくてもある程度まで進めるようになったのも一因」と分析しています。パズドラがリリースされたのは2012年。決算を締めた時期で考えればリリースから3年が経過し、今年から4年目です。
パズドラ以前に猛威を振るっていたドラコレがリリースされたのは2010年。しかし、コンプガチャ規制等の影響を受け、2013年頃にはじわじわとその収益を下げてきました。2010年に2,621億円だったコナミの売上は2013年に2,260億円に減り、営業利益も前年の半分近くに落ちています。全てをドラコレの責任にするには尚早な結論ですが、その後コナミの売上が2012年を超えてはいません。(コナミホールディングス株式会社HP業績・財務情報/業績ハイライトより)
https://www.konami.com/ir/ja/financialinfo/sales.html
他に「以前力のあったゲームアプリ」と言えば「神撃のバハムート」でしょうか。こちらは2011年にサービスが開始していますが、今は以前より落ち着いています。
現在リリースされている人気アプリはいつまで続く?
モンストがリリースされたのは2013年。この頃に艦これもリリースされています。白猫のリリースは2014年です。ユーザーがゲームに慣れてくるスピードを考えると、それぞれ今年、来年がゲーム・・・というよりSAP自身の勝負の年になりそうです。ゲーム自身を育てるというのも大事ではありますが、海外展開をして明らかに好調であるという会社は今の所ありません。モンストでさえ、まだ海外での売上は日本の1/5ですから、日本が停滞する前に今と同じだけの売上を生み出すのは時間がかかりそうです。
それであればコロプラのように「3年経つ前に新規のゲームを開発しヒットさせる」ということが必要となるでしょう(前述の通り、言うだけなら簡単ではありますが・・・)。海外展開はDeNAやグリーも行っていますが、まだ大きな利益にはなっていません。また、コロプラがゲームアプリをヒットさせ続けている理由はそのリリース数にも因るように思えます。現在コロプラがリリースしているアプリは約13タイトル。対してガンホーは現在11タイトル、ミクシィは2タイトルです。DeNAやグリー、DMMはプラットフォームのためゲーム量は多いですが、開発先はバラバラなので玉石混合です。
こう見ると、ゲームだけに絞っているガンホーには今後の期待が持てますが、ミクシィやプラットフォーム系は残り2年ほどの間に次のヒット作が出せるかが勝負になっていることがわかります。「ウェブサービス」の会社として手広く事業を広げるのか、「ゲーム会社」としてゲームサービスにこだわり抜くのか、この2つのポリシーがどう生き残るのか、これからも見守りたいと思います。