ゲームの開発と比べて圧倒的に違う部分
ビ・ハイア大下:経験や実績がある所しか発注されない状況はこれまでも同じでしたが、仕事が溢れるくらい沢山あった関係もあり経験がある会社を通して未経験の会社に発注が生まれていた時代でした。ただ、現在は経験豊富な所でさえ仕事がありません。そうした中で遊技機の開発において苦労する部分、コストが掛かる部分はどこなのかお聞きできればと思います。作っている途中に見てもらい、やり直しの頻度がゲームに比べて高い気がします。何故そうなるのでしょうか?
アカギ松岡:多分ですが、物作りの始めは企画が基本です。こんな言い方はしたくないですが、作ろうとしているメーカーや企画を立ち上げる人間の情熱がゲーム業界に比べて「低いから」だと思います。
ビ・ハイア大下:低い?というのは。
アカギ松岡:低い故に通せない、という事があると感じています。恐らくですが、ゲーム業界のプロデューサーは作りたくて作っているけども、パチンコ業界のプロデューサーは作りたくて作っている人はそれに比べて少ないのでは?と思います。そこが大きく違う所だと思います。あとは、メーカーのスタンスとして物作りに対しての知見が低い場合です。もちろん、全部のメーカー、会社様が、という訳ではありません。自分たちで良いと感じて作ったものを2回目見た時に「なんか違う」と簡単にひっくり返されるのはしっかりと理解されていないからだと思います。
苦労を重ねた実体験から見えてきたこと
ビ・ハイア大下:ちなみに、その辺りについては松岡さん自身が苦労された経験をお持ちなのでしょうか?メーカー在籍時もですが、受託としてもやっている時、などです。
アカギ松岡:凄く沢山あります。この業界のお仕事は右から左へとやる事だけを淡々とこなしている訳ではありません。正解がない所に正解を作っていく分、時間を使って事を成そうという気持ちを持っていないとプロジェクトも炎上しがちです。誰のための物作りをしているかを理解しないままだと往々にして起きます。そういう意味で、作りたいという思いで作っている、という人が少なくなってきた感じとも言えます。
ビ・ハイア大下:昔で言えば、羽根モノ、普通機、くらいの時は自分でホールも運営して台も作る、というのを聞くと昔は「作りたいから作っていた」と言えます。
アカギ松岡:本当に業界の歴史の中で浮き沈みがありました。ここ5年前くらいは今までメーカーさんは作りたいものを作り→売れる、という流れで利益はしっかり出ていました。利益が出ている時はそこに注意はしません。「うん。今まで通りにやってね」と今まで通りにやって利益に結び付いていない状況になったのはここ3年です。他の業界に比べて危ない目に遭っていません。危ない目に遭っていないが故に、それに対する抵抗力や免疫力が他の業界と比べると低いです。そういった意味では今後の各メーカーの施策、方向性に注目しています。
ビ・ハイア大下:時代からして経済成長をガンガンしている時期から横ばいや減退という時期の全体を見ているとプレイヤー層も変わってきていますし、若い人が増えず客層は変わらずどんどん持ち上がりです。そこが初代の頃と現在の空気は違いますので同じ事をやって上手くいく訳がないというのは納得です。しっかり理解してやっているか、ですよね。誰が見てもやり方を変える必要があるのも明らかです
アカギ松岡:だからこそ、今一度パチンコのことを理解して取り組もう、というメッセージは業界に関わる皆さんにお伝えしたいです。パチンコが本当に好きで参入するのか、というのを改めて考えて頂きたいです。本当にあなた達はパチンコ好きですか?と。その上でやっていかないと苦しい時に乗り越えられないですし、遊技機のバブルが弾けたからゲームに移ります、という流れが生まれるだけです。
必要なのは物作りに対する情熱
ビ・ハイア大下:作りたいものを作っている人が関わる方が良いものは確かに生まれ易いです。
アカギ松岡:確率だとは思いますが、実際にそうやって作ってきたのがこの業界です。
ビ・ハイア大下:拘りを持って作る、と拘りを持たずに作る、では当たり外れは両方ありますが、大きく跳ねるものは拘りを持ち、気持ちが乗っている人でないと出せていないと思います。
アカギ松岡:ジャンルは違いますが、作曲もそうです。自分が書きたい曲を書き、思いを込めて詩を作って、歌が上手くても売れない人はゴマンといます。曲作りもパチンコ作りも一緒です。伝えたいことがある、自分で歌って曲や詩に共感して欲しい人がいる、挫けそうな人にその曲を聞いて貰って考えて貰いたい、などの思いは一緒です。ツールとしてパチンコ、が選ばれているだけで背景に流れる思いは一緒です。これだけ少ないと言われているにも関わらず、高齢の方で毎日パチンコへ行くことが楽しみという人もいますし、パチンコで救われている人もいます。いる、いない、で私は話しを進めたいです。オイシイから仕事する、では危ない時代に差し掛かっています。最終的にお金ではない部分です。自分が作りたいから赤字になっても「ここにいる!」としがみ付けるかどうかです。
ビ・ハイア大下:今まで通りの仕事がある中でしたら贅肉があってもいけましたが、現在は筋肉質にしていかないと乗り越えられない状況です。
アカギ松岡:だからこそ、こうした状況下において新しく参入したい!と言われるのは凄いと思います。参入したい!という人が多いのは喜ばしいです。ただ、本当に気持ちとしてあるのかを会社としてしっかりジャッジして欲しく思います。その差が「使われる会社」、「捨てられる会社」になるかの境目です。情熱を持っていなくても使われる会社は沢山あります。それは技術的な部分で一目置かれる存在だから、とか理由は色々あります。ただ、この業界でお仕事をするなら段階としてステップを上げて情熱を持って、取り組んで貰えたら嬉しいなと思います。
ビ・ハイア大下:その情熱の有無で言えば、有った方が良いのは間違いないですね。ありがとうございました。
次回は最終回、遊技機業界の展望についてです
株式会社アカギ 松岡社長 インタビュー記事の一覧
第1回 CR機導入以降の急成長と規制による遊技人口の減少
第2回 CT機、AT機、ART機による急激な成長から現在の状況まで
第3回 今から遊技機業界に参入する際の課題とポイント
第4回 開発会社の今後の展開
第5回 遊技機業界の展望について
さらに、他にも詳しく聞きたい方は下記よりお問い合わせくださいませ!