2016年1月30日の日経新聞に以下のような記事がありました。「東京圏、11.9万人転入超 6年ぶり高水準 宮城は転出超過に」「23区への転入超過4%増 14年、都民も都心回帰進む」「有効求人倍率、15年は1.2倍 24年ぶり高水準」「アソビズム社長 大手智之に聞く 新拠点 なぜ長野に 家族の時間 大切にできる」今回は、これらのいくつかの記事から導き出せる結論についてお話ししたいと思います。
東京都の人口密度ご存知ですか?
東京で社会人として働いている方の大半は毎日満員電車に乗って出退勤を繰り返す日々を送っているかと思います。誰もが一度は「満員電車なんて嫌だ」「なんでこんなにぎゅうぎゅう詰めにされなきゃいけないんだ」と思ったことがあるはずです。
では、その「なぜ」という疑問に対して、人口密度という点から考えてみましょう。2010年の国税調査によると、東京都の人口密度は6017人/㎢です。都道府県の中で最も人口密度は低いのは北海道で、70人/㎢です。その差は約86倍です。
ちなみに内閣府の国民経済計算によると、東京都の一人当たり総生産は692.60万円に対して、北海道の一人当たり総生産は334.69万円。両者には約2倍の差があります。つまり、東京の満員電車に不満のある人は年収を1/2にする覚悟さえあれば、今の86倍の広さを獲得できるということです。
「東京」という名の巨大労働施設
そして東京への人口流入、転入超過は今でも続いています。むしろ年々増えています。総務省の住民基本台帳に基づく2015年の人口移動報告(外国人を除く)によると、東京圏(東京、神奈川、埼玉、千葉)では転入者が転出者を上回る「転入超過」が前年比9949人増の11万9357人でした。特に東京への転入超は20年連続です。
また、総務省の住民基本台帳に基づく2014年の人口移動報告によると、東京23区への日本人の転入超過数は13年比4%増の6万3976人となっています。0~14歳の子どもと65歳以上の高齢者は転出超過で、15~64歳の生産年齢人口が転入超過となっています。数字だけ見ると、東京が15~64歳までを働かせ続ける巨大な労働施設のようにも捉えられるのではないでしょうか。
「地方に仕事がないから東京…」は正解?
一方で、厚生労働省によると、2015年平均の有効求人倍率は1.20倍と1991年以来、24年ぶりの高水準となっています。その中でも、東京都の有効求人倍率は、厚生労働省東京労働局の職業安定業務統計によると、1.57倍と高い数値になっています。つまり地方から東京に仕事を求めてきたとしても、約64%の確立でしか職に就くことができないという計算になります。
「地方には職がない」と言って東京に出ることは簡単です。東京へのあこがれもあると思います。しかし、その一方で、36%の確率で職にありつけないリスクがあることも考えておくべきでしょう。仕事したい人を吸い寄せつつも、仕事をさせるに値しない人を排除するシステムが東京にはあります。
なぜ東京の会社は地方に支社をつくるのか
「城とドラゴン」「ドラゴンポーカー」で有名なゲームパブリッシャー株式会社アソビズムは、2013年に長野ブランチを設立しています。日経のインタビューには、子育てのしやすさを理由に挙げています。しかし、アニメゲーム漫画業界のクリエイター専門求人サイト「ラクジョブ」を運営している弊社ビ・ハイア株式会社が多くの業界の会社から聞く地方進出の理由は東京での採用の難しさです。確かに仕事を求めて毎年人が東京へ集まっていますが、企業がクリエイターを採用したいという需要は人口超過以上に高まっています。特に企業が欲しがる、いわゆる「即戦力」クラスの人材は選びたい放題な状況です。
そんな中で東京でも採用に限界を感じた企業が地方への進出を始めています。ufotable(ユーフォーテーブル)、京都アニメーション、P.A.WORKS(ピーエーワークス)、Go Hands、ガイナックス、フロム・ソフトウェア、exsa、Exys、テクロスなど地方に開発拠点を持つ会社も探せばいくらでも見つかります。
感覚ではなく、論理的な判断を
ただし、業界最大手群の会社は地方には進出しません。いくら人がいないからと言って、最大手が地方に進出しなければ採用できないほどではないからです。かといって中小企業も東京と地方に戦力を分散する余裕が資金的にも人材的にもないので地方に進出できません。今地方への進出を始めている会社は、地方であっても採用ができて人が増えれば、会社規模を大きくできるし、今何とか事業規模を大きくしたいと思っている会社です。
求職者の側からすると、地方へUターン、Iターンというと東京から逃げる選択のように思えてしまう方もいるかもしれませんが、個人としてビジネスチャンスをつかむための選択として地方を選ぶことも十分考えられる時代です。最大手でなくても、今後の伸びしろが期待できる会社をお探しであれば、アニメゲーム漫画業界の地方進出のニュースにはアンテナを張っておいて損はないでしょう。新拠点を設立する際には、主要メンバーは本社から来るにしても、新規採用枠も必ず用意されます。拠点として体制が整うためには最低でも1年はかかります。つまり地方進出1年以内が狙い目です。地方に帰りたい、行きたい、でも仕事もちゃんとしたいという方の見識が広がればと思いこの記事を書きました。アニメゲーム漫画業界で地方の求人が増えるように今後もラクジョブでも情報を発信していきます。