こちらは、3DCGアニメーターを目指す人や3DCGアニメのクオリティーあげたいと思っているクリエイター向けの記事になります。最近、フル3DCGのアニメーションが増加傾向になります。「蒼き鋼のアルベジオ−アルス・ノヴァ−」「シドニアの騎士」、2016年冬アニメでは「亜人」と年に数本程度ですが、フル3DCGのアニメーションが放送されるようになりました。
今でこそ、フル3DCGでアニメーション制作ができるようになりましたが、以前は「キャラクターが可愛くない」「動きがおかしい」など言われていた時期がありました。今回は、いつからそうなったかについてと、3DCGアニメーションが今後どのようなことが求められていくのかについて書こうと思います。
3DCGキャラクターのダンスシーンが注目され始めたのはいつ頃だと思いますか。
そのきっかけは、東映アニメーションによって制作された「フレッシュプリキュア」のエンディング曲と言われています。
プリキュア:3DCGでアニメ業界に衝撃 進化の軌跡を探る
もともとフル3DCGアニメーションの先がけは、1995年の劇場版アニメ「トイ・ストーリー」が最初でした。一方の日本では、2000年ごろから、メカのみを3DCG化する作品が増え、背景にも3DCGが使われるようになっていきました。そのもの自体の形状があまり変わらない戦闘機や戦車などの兵器や動きのない背景の建造部は、3DCGとしての相性が良かったのです。しかしながら、キャラクターに関しては違いました。
引用始め
国内のアニメで人間キャラの手描きが多いのは、顔がのっぺりしていて、目が極端に大きいような美少女キャラを3DCG化すると、不自然に見えてしまうことがあるからだ。また、3DCGのキャラは、動きが滑らかになりすぎる傾向があり、セル画で制作され、作画枚数を抑えたセルアニメに慣れたファンが違和感を覚えることもある。3DCGアニメとセルアニメは別もので、3DCGの女の子は可愛くならない……などとも言われていたこともあり、「フレッシュ」のEDでキャラが自然にダンスする映像がアニメファンや関係者に衝撃を与えた。
引用終わり
プリキュアシリーズ自体は、2004年の「ふたりはプリキュア」から始まり、フレッシュプリキュアは、このシリーズの4作品目になります。今回の映像は、アニメーションもさることながら、当時、話題の振付師、前田健さんが、この曲の振り付けをやったということもあり、メディアでもかなり取り上げらました。このときの映像を見た感想は、私自身も「キャラクターの踊りにキレがある」というものでした。それまでの3DCGダンスはなめらかすぎたため、動きの緩急が掴みづらく、激しい動きの割にスローに見えてしまい、キレの悪いダンスになってしまっていた印象でした。しかしこの映像は、小学生も踊れる振り付けというコンセプトで作られていたため、複雑な振り付けや激しい動きは少ないもののしっかりと緩急のついたキレのあるダンスになっていました。
ここで注目されたのが、セルルックという手法です。3DCGの映像をセルで書かれたようにする技法になります。最近のアニメ業界では、3dsMaxを使用しています。これを使う最大の要因は豊富なプラグインです。中でも「pencil」は、3DCGをセルルック調にレンダリングしてくれるということで、アニメの制作会社では最もよく使われているソフトになります。
引用元 「第4回 アニメーションのデジタル制作におけるアンケート」 報告レポート
引用始め
2Dセルアニメに3DCG表現を取り入れる上で 有力なCG処理手法の一つに、セルアニメ的な絵 柄を作り出す「セルシェーディング」があり、こ の処理を行うプラグインソフトはセルシェーダと 呼ばれる。 3DCGは写実的な表現で使われることが多い が、セルシェーダのようにあえて写実的でない独 特の表現を作り出すソフトは、一般的にノンフォ トリアルシェーダと呼ばれる。 統合CGソフトと組み合わせて使うプラグイン ソフトのうち、セルシェーダ・ノンフォトリアル シェーダに焦点を絞って、利用状況を調査した。 前回の調査結果に引き続き、Pencil+(3ds max 専用)が最大のシェアを占めていた。ラインや質 感だけではなく、手描きに近いパース変形を実現 する機能を搭載していること等がユーザーに支持 されている要因と考えられる。また、3ds maxが 業界で広く使用されている理由の一つにこのプラ グインの存在があると思われる。 それ以外に統合CGソフトの内蔵機能を使用し ているケースもあり、自社開発のシェーダを使用 している例も見られた。
引用終わり
いろいろなアニメ会社を訪問したり、電話でヒアリングすると、大抵のアニメ会社は3dsmaxと答えます。他は、ゲーム会社がMayaをメインツールに使っているケースが多く、Softimageに関しては、以前作っていたシリーズ物のゲームタイトルがSoftimageだった場合、引き続き使っています。しかし、LightWaveだけはどの会社さんに行っても以前は使っていたという回答が多いです。
ライブシーンやダンスはできるようになったその次は・・・
「プリキュア:3DCGでアニメ業界に衝撃 進化の軌跡を探る」の記事にも書かれていましたが、やはりダンスの次は、演技です。動きが良くなり、表情が豊かになったと言っても、喜怒哀楽のうちの喜と楽の部分のみです。顔には、表情筋と呼ばれる筋肉が30種類ほどあります。それによって、細かな表情が生まれます。しかしこの作業は、キャラクターに動きをつけるのと同じくらい、もしくはそれ以上の時間とコストがかかる作業と言われています。そんな大変な苦労を乗り越えて作った作品の代表が「楽園追放 -Expelled From Paradise-」になります。
「楽園追放」製作陣が目指した「セルアニメのようなCGアニメ」・・・話題の劇場用ロボアニメの裏側
https://www.gpara.com/infos/view/16049
引用始め
また作業が大変なキャラクターの表情付けの工程でも、工夫が凝らされていました。同社ではおもに効率化の観点から専用のツールを30種類ほど作ったそうで、このなかから今回は「GRP Face Register」というツールを紹介。これは目や眉毛、鼻、口などのパーツごとに細かなチャンネルが設定され、それぞれスライダーで直感的に制御できるというもの。さらにあらかじめ設定した表情データを保存/適用できる、母音ごとの表情を登録しておいて文字を入力することで口パクアニメーションを生成するなど、手間を省くための機能が搭載されています。こうした表情付けの作業は、CG特有の硬い表情で終わらせず、アニメーターが必要に応じてさらに細かな調整を行なっているとのこと。そのため横川氏は「セルアニメで言う『作画監督ごとのくせ、違い』のようなものも出ており、映画ではそういったところも注目してほしい」と語っていました。
引用終わり
さすがに、全パートを一つ一つ手作業で作っていくことは大変なのである程度は、パターン化したツールを作ったと書いてあります。しかしながら、30種類も自社でツールを開発し、そのうちの一つを使い、作画監督ごとの癖も表現できるレベルまで行ったというのはもはや感動ものです。それによって作られたアンジェラの戦闘シーンの怒りの表情での上瞼や下瞼の形状の変化や拡大、虹彩の収縮は、もはや2Dの作画レベルにまで達するものを感じました。
あともう一歩駆け上がれば
この表情の変化は、アクション要素を加えれば加えるほど多彩にかつ、迅速に変化する必要があります。それによって演技の幅も増え、フル3DCGアニメーションの世界はより一層広がるでしょう。そのようなことができるようになれば、新たな日本のアニメーションのジャンルの一つとして、国内外から注目が集まる分野へと成長していくと思います。
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