松（ま）っていたゲーム化、しかし・・・？
昨年10月の放送開始から巷を騒がしてきたあの6つ子が、ゲーム化決定です。アニメも人気が出ましたし、勢いはとどまることなく2期目突入。ゲーム化はそんなに驚くことじゃないかも知れませんが、何が驚きかって、『薄桜鬼』や『アムネシア』『緋色の欠片』など正統派乙女ゲームを数多くリリースしてきた老舗ブランド「オトメイト」さんからゲームが出る、ということなんです。オトメイトは、アイディアファクトリー株式会社の、乙女ゲーム専門レーベルです。この他に一般向けゲームのレーベルもありますので、今回の発表が『おそ松さんを題材にした乙女ゲーム』をリリースします、と言った主旨のものであることは間違いないでしょう。
乙女ゲームってそもそもなんだったっけ？
こうなると、疑問は「乙女ゲームってそもそも何だったっけ？」ということです。わざわざゲーム化第一作目が乙女ゲームのレーベルから出るって事は、さぞかし作品内容と合致しているジャンルなんだろうな。うんうん。というわけで乙女ゲームとは何だったか、思い出してみましょう。乙女ゲームの歴史は1994年、コーエーさんがリリースした『アンジェリーク』から始まったと言われています。その後、大ヒットナンバリングタイトル『遙かなる時空の中で』なども出て、主にコーエーさんから出ている乙女ゲーム作品は「ネオロマンス系」と呼ばれ女性向け恋愛ロマンスゲームという新たなジャンルを生み出します。
コーエーさんだけではなく似た作風の女性向けゲームが乱立する中、今まで男性向けゲームで培ってきたシステムを女性向けに応用し、有名声優を多数起用、女性の様々な妄想をくみ取りキャラのタイプ分けや恋愛エンド以外のルートを豊富に取りそろえて認知度を高めた2002年の『ときめきメモリアルGirl’sSide』の発表で認知度を高め、明確に乙女ゲームというジャンルが確立しました。乙女ゲームの特徴としては、女性は主人公で、プレイヤーはこの女性主人公となって、様々なタイプのイケメンキャラの中から自分の好みのキャラクターに照準を絞り、会話やイベント中で好かれそうな選択肢を選び進めることによって好感度を上げ、最終的にそのキャラクターと結ばれることを目指すという構造となっています。女性主人公と・・・イケメンと・・・恋愛要素。。。あるぇ？と、様々あるツッコミどころは置いておいて、次に『おそ松さん』がどういった作品なのか振り返ってみましょう。
一方、おそ松さん
『おそ松さん』とは、昭和の時代に日本中を湧かせたギャグアニメ『おそ松くん』の作者、赤塚不二夫先生の生誕60周年を記念して作られた6つ子のおそ松くん達の成長した姿を描くアニメ作品です。大人になって平成の現代を生きる「元・おそ松くん」「現・おそ松さん」たちは、誰ひとりとして定職に就かず、いまも変わらず6つ子で一つ屋根の下ニート生活を謳歌しています。そんな彼らに、両親の離婚の危機や、リア充との戦いが巻き起こる・・・！
全然乙女ゲーム向きじゃなくない？というツッコミはナシの方向で
そもそもギャグマンガだし、6つ子なせいで見た目の特徴そんなに変わらないし、キービジュアルを見る限りイケメンではありません。（F6バージョンならイケメンだけどそれで前編ゲーム化するとしたらもはや別作品）冷静に「全然乙女ゲーム向きじゃなくない・・・？」という突っ込みを入れたくなりますが、思い出してください。過去にも、本編に恋愛要素が一個もないのに乙女ゲーム化されたジャンル違い作品がありました。そう、『テニスの王子様』です。『テニスの王子様』と言えば、2000年代初頭に『週刊少年ジャンプ』で連載されていた正統派スポーツ漫画です。青春学園中等部のテニス部に所属する主人公を中心に、あらゆるライバル校と戦いながらテニスと絡めて各チームの一人一人の人間ドラマを描いた本作は女性ファンを中心に社会現象とも呼べるほどの大ブームを引き起こしました。作中には、最初の頃にはヒロインと思われる女性キャラが出てきますが、一般的なテニスの試合から方向転換して超時空テニスに変化して行くにつれ段々女性キャラは出てこなくなります。
そんなほぼ女性不在作品で恋愛要素はほぼ皆無だったにもかかわらず、固定のキャラクター人気が女性から根強いという理由で、女性向けに振り切って作られた『テニスの王子様』の乙女ゲームが2005年の『テニスの王子様 学園祭の王子様』でした。当時PS2で売り出されたこのタイトルが好評で、のちに3DSに移植された『テニスの王子様 もっと学園祭の王子様』はプレミアがつき、2014年頃にはAmazonで53,000円の値段がついていたこともありました。私も所有していましたが、主人公の女性キャラはゲームオリジナルで顔は出ず、作中ではテニスもしません。各校が集まって合同学園祭を行うことが決まり、主人公はその実行委員に任命されます。そこで、自分の好きなキャラクターの所属する学校いずれかを選ぶことが出来、そのキャラに接触して好感度を上げながら、学園祭最終日のキャンプファイヤーに臨む・・・という筋書きだった・・と思います。このように、テニス漫画だけどテニス要素なしで恋愛ゲームとして成立してしまうという前例もありますので、今回の『おそ松さん』だって、みんな同じ顔でニートでステータスもないしギャグ漫画だけど、恋愛ゲームに出来るはずなのです。
商業的にも作品世界への更なるディープファン層引き込みへも期待がかかる
イギリスのジャーナリスト、ウッドロー･ワイアット氏の名言に「男性は”目”で恋をし、女性は”耳”で恋に落ちる」というものがあります。前述した『テニスの王子様』も、漫画連載開始時は「絵がいい」とか「イケメン」などとは言われていませんでしたが、女性人気に火がついたのはアニメ放映開始からでした。その当時をときめく声優たちが多数起用され、声優パワーもあってキャラがイケメンとして認識されたといっても過言ではありません。
そして、今回の『おそ松さん』でも顔は同じにもかかわらず6つ子の声優は全員違い、まさに今をときめくアイドル男性声優たちが起用されて話題となって居ます。声だけがブレイク要素とは言いませんが、そこから興味を持った女子ファンも多いはずですし、”耳”というのに関連して言語中枢機能に優れているのも女性の特徴で、ささいな会話なども細かくインプットして覚えていることから、こうした本筋と離れたジャンルのゲームが作られ、本編では知れない一面が会話によって引き出されてくるとどんどんそのキャラに恋をしてしまう傾向があるのです。
この、『おそ松さん』の乙女ゲーム化によって、本編では描けないキャラの一面がフルボイスで進行していき、最後には恋に落ちるエンディングが待っているとなると、『おそ松さん』自体への更なるファン層のディープ化とお布施収入が見込める結果になることは想像に難くありません。まだフルボイスなのか、完全オリジナルストーリーなのか、そもそも6つ子を対象とした恋愛シミュレーションゲームなのかすら、全く発表されていないのにもかかわらずここまで3000文字近く書いています。この情熱、おわかりいただけるでしょうか。情熱を、もてあます。ふぅ。続報に期待、ですね！
オトメイト 超人気TVアニメ「おそ松さん」のゲーム化について
https://www.ideaf.co.jp/news/?num=20160118
TVアニメ『おそ松さん』 https://osomatsusan.com/
コーエー 『遙かなる時空の中で』
コナミ『ときめきメモリアル Girl’s Side』https://www.konami.jp/gs/game/Girls_Side/
コナミ『テニスの王子様 もっと学園祭の王子様』https://www.konami.jp/tenipuri/game/gakupuri/
