アニメ業界のヒーローにはなれなかったサムライフラメンコ
2015年12月末、年の瀬が近づき、世間の空気は弛緩し、アニメ業界も休みに入ったり、入れていなかったしたころ、一つのニュースが業界を騒がせました。「博報堂、自前でアニメ 制作スタジオ新設 」。
9月の終わりに「サムライチャンプルー」や「神のみぞ知るセカイ」「ハヤテのごとく!」の制作で知られた株式会社マングローブが倒産し、同社が制作を進めていた劇場アニメ「虐殺器官」が公開延期になるなど、アニメ業界の先行きを心配させるようなニュースがありました。その矢先に、電通に次ぐNo.2の大手広告代理店博報堂のアニメ制作スタジオ設立の知らせ。今、アニメ業界に何が起きているのでしょうか。
まずは、博報堂のプレスリリースから見てみましょう。少々長いですが、全文読む価値があったので全部載せます。
さて、まず博報堂グループの株式会社スティーブンスティーブンについて。株式会社スティーブンスティーブンは、2011年に設立された博報堂の子会社です。『攻殻機動隊 STAND ALONE COMPLEX』『攻殻機動隊S.A.C. 2nd GIG』『東のエデン』『009 RE:CYBORG』などの監督を務める神山健二さんが代表を務めることで話題になりました。
最近は、東京ディズニーリゾートや大成建設、富士重工業、Z会など、企業広告にアニメーションが使われる機会が増えています。しかもこれらのアニメの特徴として、短いながらもその中にアニメとしてのストーリーもあり、単にアニメーションという技術を用いて広告映像を制作したというわけではなく、広告宣伝という効果性とアニメであるという作品性を両立していることにあります。
一か八かのアニメ制作
30分アニメや劇場アニメは基本的に作品性のみで成立しています。アニメという作品に対してファンはお金を出しますし、関連グッズも購入します。アニメ会社はアニメをファンに楽しんでもらうことが第一義です。しかし、このアニメにファンがつくかつかないかはその作品が世に出るまで分かりません。
前述のマングローブでも「サムライチャンプルー」「Ergo Proxy」「ミチコとハッチン」「サムライフラメンコ」などのオリジナルアニメを制作していましたが、BD/DVDの売上は伸び悩んでいたそうです。いくら作品が面白かったと評価されても、ディスクの売上に繋がらなかったり、グッズが売れなければ、赤字になってしまいます。その赤字のリスクヘッジのために製作委員会方式が取られていますが、根本的な売上拡大、市場拡大に繋がるものではありません。
そこでアニメが儲かるための直接的な手段は作品としてアニメを制作することから来るいわばBtoC的なビジネスモデルですが、アニメーションは元を正せば映像的表現技法の一つでしかなく、アニメという表現を活用したいというBtoBのニーズもあります。例えば、アニメと親和性の高いゲームのOPやムービーとして、アニメ作品の版権を活用した遊技機(パチンコ、パチスロ)の際に映像演出として間接的なアニメの活用がされています。
事実、一般社団法人日本動画協会の調査によると、遊技機系のアニメ制作は、2008年の1528億円から2013年の2427億円までの5年間で約1.58倍に拡大しています。倒産や過酷な労働環境、薄給ばかりが取り上げられるアニメ業界ですが、まだまだ拡大の余地はあります。
しかし、アニメ業界の間接的活用が広がるためには一つの壁があります。それはアニメファンはアニメが利用されていることに耐えられないということです。例えば、ゲームやパチンコ・パチスロのように馴染んでいるものであれば問題ないのですが、アニメキャラクター宣伝のために無理やり商品を使わされている、動かされている感出てしまうと、ファンへの訴求効果がなくなるどころか強い反発にも繋がります。
これはアニメに限った話ではありません。原作レイプという言葉があるほどに、アニメゲーム漫画などのコンテンツに対してファンは強い思い入れを持っています。そして、アニメと親和性の低いもの、日常性が高い商品になればなるほど、アニメと商品が同じ画面に存在している違和感にファンは耐えられなくなります。
これからアニメは一気に伸びます、必要とされます
ITmediaが株式会社スティーブンスティーブンにインタビューを行った際、神山さんと共同代表の古田彰一さんがスティーブンスティーブンの設立について以下のように語っています。
“会社になるということは、戦略を10年単位で考えていくことになります。その場だけみんなをつなげて幸せにしたよみたいな話ではなく、10年後に何がどうなっていると良い世の中なのかを考えられる。そうした大きな創造力を働かせられるメリットが大きいので、会社体にしました。”
スティーブンスティーブンの設立が2011年、つまり、約5年が経過してやっとアニメと広告という親和性の低い分野を結びつけるアニメの新しい形に糸口が見えてきたからこそ、その実制作部隊、アニメーションスタジオとしてのCRAFTARが立ち上げられたということではないでしょうか。
これまで手探りだったアニメの新しいビジネスモデルが博報堂、スティーブンスティーブン、CRAFTARという一貫した制作の下に一気に加速していきます。アニメ制作会社さんはどうしても職人気質なところも多いので、どうしても本業のテレビアニメや劇場アニメを制作したいという会社さんも多いとは思います。
一方でアニメ業界の発展のために積極的にアニメ会社の紹介を行っている弊社ビ・ハイア株式会社には、ゲーム、遊技機、CMに関連するアニメ制作を行ってほしいという相談を多くいただきます。アニメ業界の発展のためにも、アニメ業界の実情を理解したうえで両社にとってプラスになるような紹介をしますので、もしアニメ制作案件を他業界から受注して売上を増やしたいという方がいたら、お気軽に弊社までご連絡ください。