こんにちは。ビ・ハイアの床井です。記事を読んでくださってありがとうございます。今回の記事は、「ゲーミフィケーションと教育」というテーマでお送りします。
マーケティングに抜群の効果のあるゲームの仕組み
ゲーミィフィケーションという言葉があります。これはゲームが持っている「人を熱中させる仕組み」をビジネスや組織のデザインなど、色々なものに応用していこう、という考え方の事を言います。応用範囲の広い言葉ですが、ゲームが持っている諸要素—ステップバイステップに達成感を得られる設計、他のプレイヤーとの協同などーを、仕事のフローの中に入れたり、後輩の指導の仕方に取り入れたりする事を指します。
ゲームの要素を取り入れる事によって得られる効果は、マーケティングの言葉で言えば「エンゲージメント」を高めることにあります。エンゲージメントとは顧客の商品に対する忠誠度を指す言葉です。最初は商品に見向きもしなかった客が次第に商品を知り、段々心引かれ、やがて夢中になり、ロイヤルカスタマーになるーそんな顧客の購買心理をコントロールしていく上でゲームが人を夢中にさせるプロセスは「使える」のです。
SNSによって、「よく整備されたベルトコンベアー」が出来る
facebookなどのSNSがコミュニケーションツールとして定着してきたことが、ゲーミフィケーションが流行っていることの背景にはあります。テレビや新聞などのマスメディアではなく、より個人の趣味を繁栄した多様な情報が溢れている現在、顧客に購買行動を起こさせるにはライバルが多く手間がかかるのです。そこで、小さなアクションから始まって徐々に夢中にさせる(悪く言えば依存させる)ゲームの手法が必要になります。
この手法で成功したアプリの例としては「食べログ」等が上げられます。「食べログ」にはレビュアー間の競争やランキング上昇による達成動機も取り込まれています。見ているうちにレビュアーになりたくなり、レビュアーをしているうちにどんどん新しい店を開拓したくなり、ライバルに勝って嬉しくなり・・・と、どんどんゲームにハマっていく仕組みがあります。
ゲーミイフィケーションはこのように、企業にとっては極めて高い効果を上げるマーケティングです。しかし、ユーザーにとっては一度この仕組みをはいり込むと、膨大な時間とコストを自動的に費やしていく仕組みであるとも言えます。SNSで展開されるゲームの構造は、まるで良く整備されたベルトコンベアーのように私達の行動を制御し目的地へと運んでいくのです。
教育産業とゲーミフィケーション
こうしたゲーミフィケーションの仕組みと相性が良いものがあります。それは教育産業です。教育には必ずといって良いほど「向上」、「競争」などのコンセプトが伴うため、ゲーム化することが簡単なのです。また、現在小中学校における授業への電子デバイスの導入が進んでいます。近い将来、「デジタルネイティブ」世代は学童期から自分のタブレットを持って自分だけの学習教材に取り汲む様になるでしょう。
これは大きなビジネスチャンスになります。いまゲーム作りを通じて「ゲーミフィケーション」の手段に通じている人は、教育業界からのオファーを受けることが増えていくと思います。学習コンテンツをより面白く、より個人のニーズに沿ったものにしていく必要があるからです。
ゲーム設計者の責任について
そんな可能性を秘めたゲーミフィケーションですが、仕組みを作る側にはそれなりの「良心」も必要になってきます。さきほど「ベルトコンベアー」という例えを使いましたが、熱中して長時間を費やす可能性があるだけに、それが本当に利用する人のためになるのか、吟味をする必要が出て来ます。例えば「就活自殺」という社会現象が存在しますが、これも大学というベルトコンベアーに載っていたと思ったら、突如として社会という行き止まりに直面したがために怒ってしまう問題なのです。幼児期の教育がその人の人格形成に大きな影響を当たれる様に、子供の頃に触れたアプリは大きな影響を子供に与えるでしょう。
それを設計する人には、その子に大きな影響を与える可能性があると言うことを自覚する責任があると思います。読書を推奨するビ・ハイアのスタッフとして、最後にこんな問題を考える上でおすすめの本を紹介して、この文章を終わりにしたいと思います。(画像はAmazon.comのものを使っています。)
学校と社会(ジョンデューイ)・・・教育と社会の接続について考える上での古典的必読書です。
子どものUXデザイン(デブラ・レヴィン・ゲルマン)・・・子供向けアプリなどを作る際に必要な知識が詰め込まれています。年齢に応じてUXデザインは変える必要があるのです。
教育の職業的意義(本田由紀)・・・現在の若者を取り巻く就労問題についての本です。