気合いだけでは伝わらない!?
イラストレーターやデザイナー、アニメーターなど手を動かし絵を描く職種であれば、細かい種別はさておき作品ありき、ポートフォリオ重視で選考が進みます。「絵は描けないけどやる気はあります!だから絵の描き方から教えてください!」は門前払いです。
新卒採用の場合はデザイン系の専門学校や美術大学の卒業予定の人が多く採用されます。彼らは授業で毎日絵を描いているので、普通の新卒に比べると絵が描けると考えられます。それ以外の学校の卒業生だと、ポートフォリオや作品を全く持っていない、もしくはまともに絵も描いたことがないという人も出てきます。正直なところ、そのような人たちは企業側としても採用しようがないので、どうしても採用できる可能性が高い方に対して労力をより多く割く判断がされてしまいます。少なくともアニメゲーム漫画系の会社に入れば、1からなんでも教えてもらえると思うのはやめてください。未経験者の人がアニメゲーム漫画業界で仕事しようとするのであれば0からなんでも全部自分一人で切り開いていく覚悟が必要です。そして、作品づくり、ポートフォリオ制作もその一部です。
では、ポートフォリオは具体的にどうあるべきか、少しだけ紹介します。まずポートフォリオに求められるものは何よりまず量です。他より多く描いた人がいれば、その分他の人よりも有利になれると考えてください。多くの会社で言われることは、応募してくる人のポートフォリオが少ないという感想です。デザイナーとして、仕事することになれば、毎日フルタイムでデザインに関係する業務に従事します。それが標準的な基準です。では、応募しようとしている人の中に1日8時間以上絵を描いている人はどれくらいいるのでしょうか。生活するためのお金を稼ぐためにバイトをしないといけない、学生なので授業に出なければいけないなど、色々と理由はあるかもしれませんが、それは応募する側の理由であり、採用する企業にとっては関係ありません。それに、いざ働くとなれば、さらにシビアな世界です。どんな理由があろうとクライアントの意向が最優先です。そんな時に理油を見つけて仕事に身が入らない人、求められているクオリティを発揮できない人は企業にとって不安材料にしかなりません。逆にどんな理由があっても自分で工夫して1日8時間絵を描く時間を作れるような人はそれだけでも十分評価されます。
次のポイントは、ポートフォリオの種類です。今アニメゲーム漫画業界でデザイナーとして働きたいと思っている人は何かしらアニメゲーム漫画のデザインに影響を受けて、それをいいと思って自分もそういうものを作る仕事がしたいというように思った人がほとんどだと思います。そういう人たちはどうしても、制作物の種類が偏ってしまいます。かわいいキャラクターに惹かれた人はかわいいキャラクターのイラストを、イケメンキャラクターに惹かれた人はイケメンイラストを、メカ好きな人はメカデザインを好んで作成します。もちろんデザイナーとして個性や強みがあることは悪いことではありませんが、それしかできないデザイナーになってしまうと、企業側としては二の足を踏んでしまいます。個人のクリエイターとして名前が売れている人であれば、どんなものを制作しても一定数の固定ファンが必ず購入してくれますが、アニメゲームは集団制作です。ブランディングのために布陣の主要人物の名前は利用しますが、基本的にはその下の名前も知られていないようなクリエイターが実作業に当たります。そこで求められるのは、個性を発揮することではなく、集団制作物としての作品に合ったデザインを仕上げること、つまり柔軟な対応力です。マルチなデザインタスクを器用にこなせる人が求められます。だからこそキャラクターなど一点に集中しすぎることなく、様々な制作に対応できることを企業にアピールするためのポートフォリオが必要になります。
そして、その柔軟な対応力のために必要なデザインの基礎がデッサンです。デッサンが全ての土台になります。デッサンができると空間把握能力が高くなり、あらゆる方向から整合性のとれたデザインを起こすことができます。近年は2Dで絵を描けるだけでは不十分で、それを元に3Dに起こすことも必要になります。その時になって、3D空間上では成立しえないデザインは採用されません。何か新しいものを求められたときにそれに対応するための基礎がデッサンです。筋トレやランニングと一緒です、しっかり鍛えておけば、いざという時に対応できます。また、キャラクターが描きたい、メカが描きたい、という方でもデッサンがしっかりしていると絵としてもバランスが取れて見ごたえのある絵が描けるようになります。毎日絵を描くこと、そして毎日デッサンをすること、そしてデッサンをポートフォリオでアピールすること、それがアニメゲーム漫画業界でデザインの仕事をするための第一歩です。ちなみに、ロックマンのデザインで有名な稲船敬二さんはカプコンの面接の際に何も言われてもいないのに、スケッチブックを4冊持参して自身のデザイン力をアピールしたそうです。たとえ、どんなにデザイン力があったとしてもそれが知られていないのであれば、相手にとってはそれを知りようがありません。ぜひデザイン力のアウトプットツールとしてのポートフォリオをしっかり作成していただいた上で求人にご応募ください。