ゲーム業界は、8~9割が受託開発会社で、メーカー・パブリッシャーと呼ばれ、自分達の名前でゲームを販売ないし、リリースしている会社は全体の1~2割です。その中でも、大手メーカー・パブリッシャー(任天堂、SONY、バンダイナムコ、KONAMI、SQUARE ENIX、SEGA、CAPCOM、コーエー、グリー、DeNA、ガンホー、ミクシィ、コロプラなど)と中小メーカー・パブリッシャー(アクワイア、エクスペリエンス、サクセス、アークシステムワークス、SNKプレイモア、日本一ソフトウェア、ハッピーエレメンツ、ドーナッツ、アソビズム、S&P、アカツキ、ヒッポスラボ、ウインライトなど)とでは、同じメーカー・パブリッシャーですが、大手と中小ではやはり違いもあります。「自分たちでゲームを出しているメーカー・パブリッシャーで働きたい」という方へ、今回は、大手と中小の違いについてお話します。
まず、どんなゲームを開発できるか。大手メーカーであれば、有名シリーズのゲーム開発に関われると思うかもしれません。しかし、必ずしもそうではありません。大手の会社は確かに有名なシリーズをいくつも開発していますが、それらは全体の一部分でそれ以外にも数多くのゲームを開発しています。いつまでも一つのシリーズに頼るのは、経営的にもリスクですし、現場的にも欲求不満の原因になります。シリーズでヒットタイトルを安定して供給しつつも、新規タイトルで新たなヒットを狙います。これはパブリッシャーの場合も同様です。中堅規模にまで成長できた会社にはヒットタイトルが1、2本あります。しかしその運営だけでは、経営的にも現場的にも問題になってしまうので新規タイトルに挑戦します。
中小のメーカーの場合は、1本1本にかける熱量が大きいです。同時に開発が進むプロジェクトは多くないので、1本1本が命がけです。もちろん経営的に計算されて、1本ヒットしなかったから即倒産ということはありませんが、大手より会社としての体力がないのは事実です。シリーズものもそんなに長く続くものは少なく、次なるヒットタイトルの開発に取り組みます。会社ごとにある程度の得意分野もあります。誰もが知っているヒットタイトルは多くないですが、ゲーマーなら知らないわけがない1作が必ずあります。また、社長がゲームに熱い会社も多いです。
次は、実際の一人一人のクリエイターの働き方について。大手はとにかく業務が細分化されます。大規模開発になればなるほど、一つ一つの制作物に高いクオリティが求められるようになるのと、制作管理の必要性から専門的に作業する人が求められます。ゲームのメニュー画面だけを5年間ずっと描いていたとか、ゲームの3DCG背景だけ制作していたとかいう人がザラにいます。もちろんスペシャリストとして技術を特化させることは、クリエイターとしての希少価値を高めますが、同時にそのスキルがゲーム業界そのもので必要とされなくなるリスクがあります。ファミコンやスーファミでドットのグラフィックをしていた人やコンシューマーで2Dしかやってなかった人は、今非常に苦労しています。また、C++でコンシューマーの開発をしていた人が遊技機の組み込み開発に転職するという話も多いです。勤めている会社ありきになってしまってしまうリスクもあります。また、大規模開発になればなるほど開発期間も長くなります。総開発期間3年、5年というプロジェクトで開発スタッフが入れ替わり立ち替わりで苦労することもあるそうです。
中小の場合は逆に一人一人の業務範囲が幅広くなります。これをやっていれば大丈夫というものではなく、3Dは一貫して全行程ができる人がいい、2Dが描くだけではなくアニメーションやエフェクトができる人がいい、プランナーはレベルデザインやディレクターの仕事もしてほしい、などなど多種多様な採用の要望を聞きます。全部が100%できる必要はありませんが、できないものに対してできないでは済まされない場所です。会社にとっても初の試みというものも多く、誰かに聞くこともできないから自分でやるしかないという状況になっても、なんとかできる人が求められます。逆に率先して業務フローを効率化できたりするので、その方が働きやすいという人もいます。また、ゲームそのものへの提案も比較的やりやすいです。
最後に労働環境についてです。基本的には、どちらも大変です。毎日必ず定時に帰れるような会社はほどありません。保険や手当てなどの福利厚生は大手の方が整っています。給与は平均すると大手の方が高いですが、大手は上が詰まっていてステップアップしづらいので、上を目指したい人、給与をぐいぐい上げていきたい人には向かないかもしれません。ただ、ゲームがヒットすると業績連動で社員全員に高額な賞与が出ることはあります。中小企業の方がステップアップの可能性は高いです。仕事も幅広くできるので、アピールチャンスも多いです。その代わり、頑張らない人への評価は当然低くなります。生半可な覚悟では通用しません。
以上、いくつかの点で大手と中小を比較しましたが、実際のところ一長一短です。どちらがいいかは人それぞれです。ただ、もし自分に絶対的な自信がある人であれば、独立・起業という選択肢も考えてください。スピードの速いゲーム業界だからこそ新しい会社の誕生も必要とされています。ゲーム業界全体がさらに発展するためにも一人一人に合った選択をしていただいくための参考にしてください。