格闘ゲームの祭典
プレイヤーも見ている側も血湧き肉躍るゲームジャンル。それが格闘ゲームでしょう。一進一退の攻防にハラハラし、圧倒的な実力で一方的に捩伏せるスーパープレイヤーのテクニックに酔いしれ、一発逆転の展開に観衆は感動する…という光景は、日本ではあまり見られません。それもそのはず、デジタルゲーム上の試合、競争を観戦するということに馴染みがないからです。ゲームプレイを一つのスポーツとして認識する国々では、プロゲーマーたちの熱い戦いを観戦する大きなイベントが多く開かれています。こうしたeスポーツという分野は、アメリカ、イギリス、中国や韓国などでも盛んに行われています。
格闘ゲームのみを種目としている人気のeスポーツ大会「Evolution (以下EVO)2016」が今年も開催されました。『ストリートファイター5』『ギルティギア イグザードレベレーター』『鉄拳7Fated Retribution』『ポッ拳』などの比較的新しい作品のほか、人気種目として毎年注目されるのが『大乱闘スマッシュブラザーズDX』そして『大乱闘スマッシュブラザーズ for Wii U』など、日本では格闘ゲームよりパーティーゲームとしての印象が高いスマブラシリーズです。イベント全体を合わせた賞金総額はなんと約28万$(2016年7月現在で約2980万円)。ストリートファイター5の1位の優勝賞金は約641万円という、格闘ゲームの大会では最大級のイベントです。
日本のeスポーツ事情
(画像は公式サイトより)
日本では去年から今年にかけてようやくeスポーツに注目が集まってきていました。フジテレビのCS放送ではバカリズムさんがMCのeスポーツ専門番組「いいすぽ」が放送されたり、一般社団法人 日本eスポーツ協会が主催した「第1回日本eスポーツ選手権大会」が開催されたりとだんだんと盛り上がりを見せてきてはいるのですが、その盛り上がり方は非常に緩やかです。一番直近での大きなeスポーツイベントとしては「RAGE(レイジ)」が開催されます。賞金総額は400万円と日本のeスポーツイベントでは高めの設定です。種目がVaigloryとストリートファイター5に限定されているのも理由のひとつでしょうが、優勝賞金はどちらの種目も100万円。前述の「第1回eスポーツ選手権大会」では種目別優勝賞金が10万円だったのと比べると10倍も違います。有料観戦チケットを販売し、いよいよもって本格的なeスポーツイベントが開催されてくることを予感させる内容ではありますが、そもそもどうして日本ではそこまでeスポーツが認知されないのでしょうか。
RAGE公式サイト
https://rage-esports.jp/
なぜ日本でeスポーツが流行らないのか?
日本でeスポーツが流行しない理由は様々あり、これが一番のボトルネックだ!というものがあるというよりかは、複数要因が複雑に絡み合って、大会が開催しにくい状況だったり、賞金が出しにくい状況だったりします。よくある説では「風営法が原因でゲームセンターでの賞金ありの大会ができないのでは?」というものがあります。確かにゲームセンター等の経営者は遊戯の結果に応じて商品を提供してはならないという規定がありますが、主催者がゲームセンター経営者ではなく、参加者から参加費も取らず、賞金もスポンサー会社から全額提供してもらうという方法をとれば、賞金付きゲーム大会が開催できます。ですから、必ずしも「風営法によってeスポーツ大会が開けない!」というわけではないのです。
参考:https://www.gamer.ne.jp/news/201512120002/
それでは何故それほどまでeスポーツが流行しないかといえば、露出する機会が少ないこと、そしてスポンサーが付きにくいことでしょう。スポンサーが付かなければ露出する機会も減るでしょうし、露出が少なければ出資元として名前がのったとしても企業にとってメリットがありません。先述の「いいすぽ!」は公開収録を生放送でストリーミング配信をしています。しかしその配信先というのは、海外のサービスである「Twichi」です。Twichiは海外のゲーム配信サービスだけあって、eスポーツコンテンツのファンも多いのです。しかし、eスポーツファンに向けた放送ではなく、まだそれほどeスポーツに対して興味関心を抱いていない人たちにアピールする必要があるのではないでしょうか。
日本にもゲームを見て楽しむ文化はある
韓国のRTSのStarCraftという作品は韓国内で大ヒットし、リーグ戦の模様がテレビで放送されるという人気ぶりが注目されたことがあります。今すぐ日本の地上波でゲームのリーグ戦を放送するということは難しいかもしれません。やはりネット利用層を中心に存在をアピールし続ける必要があります。ニコ動の人気コンテンツには「実況プレイ」というものがあります。特にスーパープレイヤーと言われるような腕前でなくても、ゲームをしながらしゃべる様子を録音し、その模様を動画にしてアップするというものですが、ランキングには人気ユーザーによる動画が何個もランクインしており、ニコニコ動画のゲームカテゴリーを支える存在感を放っています。ゲームセンターCXの頃から、日本でも「他人のゲームプレイを見る」ということは、エンターテイメントの形として存在していました。「RAGE」では格闘ゲームを実況する動画で人気を博しているせんとす氏を司会進行に起用するなど、実況ゲーム界隈との連携を視野に入れた動きがみられます。「ゲームを観る」という楽しみ方で共通するeスポーツとゲーム実況が組み合わされば、少なくともニコ動視聴者である若いゲームに興味を持っているファン層を、eスポーツ方面にもよびこめる可能性はありそうです。
記事を読んでいただきありがとうございました!