遊技機業界の現状
記事を読んでいただきありがとうございます。今回取り上げるのは遊技機業界で生き残っていくためにすることについてです。特に遊技機の開発案件が少なくなり、遊技機案件が有り余っているころに、儲かるからとか単価が高いからとか開発期間が長いからという理由で、液晶開発に関わっていた会社はかなり厳しい状況に陥っています。一方で遊技機業界で専門的に仕事をこなし、きちんと成果を上げてきた会社は今でも仕事が入っていて、次の仕事の相談も来ています。
遊技機に関しては特にプロジェクトが立ち上がらない、終わったと思ったプロジェクトが伸びる、プロジェクトが進んだと思ったら企画段階まで差し戻しになったなどなど、いろんなところに影響が出ています。その原因の一つとして保通協から出ている型式試験実施状況についてみてみましょう。この表から読み取れることとして、昨年9月から続いていたパチンコの適合率が一時3割台まで落ち込みましたが、いったん回復し、今また少し下がって6月の実施状況結果を見ると適合率は47.7%といったところです。受理件数はそこまで大きく変わってはいませんが、やはり昨年9月までの9割前後の適合率から大幅に下落していて、これがプロジェクトが立ち上がりにくい理由の一つになっています。
現在の問題点
新しいプロジェクトが立ち上がらないだけではなく別の問題として、そもそもの発注金額が下がっているという事象も発生していて、これがまた遊技機開発会社に大きなダメージを与えることになっています。ゲーム等と比較して遊技機の案件を積極的に受けてきた会社としては、ほかの案件を受けるよりも多少仕様変更が多いし、開発したことがひっくり返されるリスクはあるものの、単価の高さと期間の長さにメリットを感じて積極的に受託してきました。映像を作って担当者がOKだったとしても、その先でNGとなればすべて作り直し、などそういった通常は追加費用が発生するようなことについても、もともとの単価が高いことから影響を抑えられてはいました。
ところが、その単価の高さがなくなり、期間もこれまでと比較して半分程度にまで短くなっています。つまり旨味としてきた部分が何もなく、内容に対して安い単価で仕事をせざるを得ず、プロジェクトの中止や仕様変更等による開発期間の延長など、リスクのほうが大きくなってしまいました。実際に開発をしている人の声を聞くと、メーカーと直接のやり取りであったとしても、人月単価換算で2~3割減となっていて、さらに下請け等に流れるときはそこから削られて発注されるので、受けると黒字どころかうまくいってプラスマイナス0、基本的には赤字になってしまうようなプロジェクトへと早変わりしてしまいました。
また開発現場以外にも、全体の動きとして2015年のレジャー白書によると遊技機業界全体が縮小傾向にあることがわかります。
引用開始
2014年のパチンコ参加人口は前の年から180万人増えた1,150万人だった。
パチンコ参加人口については、2011年に410万人の大幅減で1,260万人になり、統計をとって以来の最低値を記録。翌12年も150万人減の1,110万人になり、前回、そこからさらに140万人減って大台割れの970万人まで落ち込んでいた。参加人口の増加は4年ぶりだが、業況の悪化傾向が続いていることから、業界関係者の景況感が伴わない結果といえそうだ。
(中略)
市場規模は24兆5,040億円で、前の年から5,010億円、率にして2%下落した。
引用終了
レジャー白書2015の概要発表 パチンコ参加人口は1000万人台を回復
このデータを見る限り遊技人口は若干回復はしたものの、市場規模としては縮小しています。そして2014年のデータなので、当時から3\2015年、2016年と業界全体の動きも鈍く、実機もなかなか売れない状況が続いていることから、最新のレジャー白書を見れば、さらに下がっていることが容易に想像がつきます。これらが今の遊技機業界の現状です。
生き残る会社と次なる手段
こういった状況下においてどういった会社が生き残っていくのでしょうか。これは多くの遊技機開発会社の社長がおっしゃっていることですが、「遊技機開発においてもほかのエンターテイメントコンテンツの開発と同じく、そのコンテンツ制作に対する情熱が最も重要であり、それがない会社は淘汰され、今の状況になった段階でさっさと方向を変えて別の仕事へとシフトしていく。そして残るのは面白い遊技機の実機を作りたいという会社のみになり、業界自体もかなりだぶついた体だったところから、筋肉質でスリムな業界へと生まれ変わるだろう」と聞いています。
実際に遊技機開発に関わっている会社で、全くパチンコを打ちません、スロットもやりません、仕事で作っているだけです。という話を耳にします。これは正直おかしな話です。仮に毎日うちことがなかったとしても、今や1パチや2スロなど少額でも十分実機を楽しむことができますし、実際に自社が担当した作品を遊ぶことぐらいはプロとしてやっておくべきことなのではないかと思います。
そしてスリムになったところで今の構造からくる問題点が解決するわけではありません。すべてのリスクを遊技機メーカーが背負い、開発を行って販売するという流れは変わりません。だからこそこういった部分に関しても、様々なアイディアを投下して、変えていく必要があるでしょう。そうしないといつまでたっても、単に縮小を続けていくだけの業界となってしまいます。遊技機を楽しんでくれているお客さんのためにも、業界をさらに成長させる必要があります。そもそも遊技機自体は国内のみで行われているエンターテイメントなので、これを海外に向けて販売できれば、業界に参入したいというメーカーも増えていきますし、開発案件自体も増えていくと思います。そういった新しい流れを業界の内外から生み出していくことこそ、これから業界を発展させるカギになることでしょう。