前半ではMighty No. 9の開発状況をお聞きしましたが、今ゲーム業界全体で大注目のVRに関する質問もしっかりさせて頂きました!ロックマンの生みの親、伝説のゲームクリエイターは果たして、VRをどのように見ているのでしょうか?
アダルトVRに興味津々?
———一昨年から去年にかけて、パチンコ・パチスロ業界が規制ラッシュにあいまして、3DCG制作会社が今とても困っています。プロジェクトが途中で止まってしまったり、プロジェクト自体が立ち消えになってしまうという声が弊社にも届いています。そんな3DCG開発会社が次に可能性を大きく見出しているのがVRなのですが、稲船さんはVRをどのように見ていますか?
VRの開発って結局、ビジネスとして成り立つかどうかということがまだ分からないじゃないですか。だから、私としても間違いなく流行る!とかは言えないですね。逆に聞きたいのだけれど、VRのジャンルで今後来そうなのはどういうところですか?
———弊社として希望が持てる分野としてアダルト方面なのかなと思います。
実は名前は言えないんだけど、「18禁でゲーム制作するんですけど、稲船さんやってみません?」って声かけられたりしたことはあるんですよ。アダルトとか18禁というのは心理戦なので自信があるんです。どういう風に感覚を作品側に持っていくかという所に、普通のゲーム上に気を使う必要があるじゃないですか。VRでやる場合だったら、そこにもっと注力しなければならない。ただ綺麗なお姉さんがいて、裸が見れる!というだけではダメなんだと思いますよ。もっと画期的なことをやらないと。
VRの落とし穴!?
———ここまでVRでアダルト方面が注目されるのはなぜだと思いますか?
単純に没入感があっていいな、という話で終わらないと思うんです。真面目な話をすると、VRというのはつまり、擬似体験がものすごくリアルにできるということですよね。現実世界では女の子はいないのに、VRギアをつければ、女の子があたかも目の前にいるかのような錯覚を味わえるわけですよね。この仕組みって、ホラーにもとっても相性が良いっていう人もいるんだけど、私は必ずそうとは限らないと思うんです。ここに、アダルトVRが注目されるポイントがあるんです。
———ホラーVRとアダルトVR、どちらも没入感を味わえそうなイメージがありますが、決定的な違いは何でしょうか?
結論から先に言ってしまえば、「VRで見える世界は、本人が望んでいるか、望んでいないかが没入感に深く影響する」です。ホラーとアダルトだったら、その点が決定的に違いますよ。ホラーVRの場合、さっきのアダルトVRの女の子が殺人鬼になるわけですよね。もうお分かりでしょう?可愛い女の子と、こわーい殺人鬼。どっちの方が「これは本物だー!!」と思いたいですか?もちろん、可愛い女の子ですよね!可愛い女の子だったら「この女の子を真実だと思い込んでください」と言われた時、「分かりましたー!!」となる。でもさ、殺人鬼が血糊べったりのナイフを振り回してきて襲いかかってくるのを「真実だと思い込んでください」と思っても、無理なんだよね。すると、目の前に広がる世界の一切を、「これは偽物だ…」と思いたくなってきて、没入感が薄れちゃうんです。
没入感を生み出すにはニーズを満たせ!
———そうなると、いかにユーザーの「望んでいる世界」を描けるかというのが、本当の意味での没入感を生み出す秘訣なんですね。
そうだと思いますよ。私もこの間VRを体験したんです。しかも、ホラーのね。体験後に感想くださいと言われてしまったから、目もつむれないホラーとVRの相性を、決して悪いと言っているわけじゃないんです。ヘッドホンとかも高性能なものを使っているから、後ろからの物音とか、誰かが近づいてくる気配とかは、本当にすごい。でも、その時点で私は心を無にしていました。だって怖いじゃないですか!だから目の前に敵がバーン!と出てきても、「ん〜来たねぇ〜」という処理を心がしたがるんです。個人的な感想としてはホラーVRは途中まではしっかり怖かったけど、途中から怖いと思う心をなくそうとしちゃって、没入感どころじゃなかった、という印象ですね。もちろん、それだけ怖いものが作れますよという話ではあると思います。
———VRでホラーというジャンルは作るのが難しいのかもしれないのですね。
そうだと思いますよ。そういう意味では、アダルトや18禁の作品は、VRというコンセプトを使う時には非常に作りやすいジャンルでもありますよね。好みとかはもちろんあるけれど、それが合致すれば絶対に拒まないじゃないですか。バーチャルリアリティーだから、クリエイター的にはいろんな体験をさせたいとつい目移りしてしまうけど、それよりも一番大事なのは、「こういう体験をしてみたい」というユーザー側のニーズを満たすことだと思いますよ。でも、そうやって作りやすいアダルトVRだって、工夫は必要です。単に綺麗なお姉さんの裸があって、いいことが出来るだけというのは普通のアダルトビデオをみているのと変わらないじゃないですか。アダルトVRには、そうじゃないアプローチ方法がある!と思っていますアダルトに限らずいろんな可能性はあるとは思うけれど、やっぱり…エロからブームがくると思いますよ。
———稲船さん!貴重なご意見ありがとうございました!