とうとう実写化が決定
(画像は公式サイトより)
『銀魂』はアニメゲーム漫画に興味のある人は誰しもが名前だけなら聞いたことあるであろう週刊少年ジャンプに連載中の作品です。シリアスなバトルシーン、切ないドラマ、そして突飛なギャグパートのバランスが絶妙なこの作品は、2004年の連載開始以来高い人気を誇っています。2016年7月現在64巻がコミックスとして発行され、累計発行部数は5000万部越えを記録しています。個性的なキャラクターたちの中には魅力的な男性キャラクターも多く、女性ファンの多いジャンプ漫画としても有名ですが、そんな女性ファン達を揺るがす噂が6月上旬から流れ始めました。それが銀魂の実写化です。
6月2日に公開されたMANTANWEBで、テレビ東京社長がアニメ作品の実写化に前向きなコメントをしたという記事があります。このようなところから、今後実写化するとしたら銀魂は入ってくるのではないか?とファンの間で噂となりました。「漫画作品の実写映画化」というのは、原作ファンにとっての大問題になります。ファンが納得できる作品ができあがるとは限らないからです。今まで持っていたキャラクターに対するイメージなどが、実写化によって特定の俳優が演じることで、「何か違う感」を味わうことになると危惧するファンは多く、特に今作の銀魂が実写化するかもという噂が流れ始めた当初のSNSやまとめサイトのコメント欄は荒れに荒れておりました。熱狂的なファン達の阿鼻叫喚が絶えないなか、2016年31号の週刊少年ジャンプで、銀魂実写化が正式に発表されました。
原作者がコメント「コケても良い」
2016年31号の週刊少年ジャンプでは、原作者である空知英秋先生のコメントが寄せられています。自身の作品を自虐しつつ、実写映画化を企画した人たちを半分小馬鹿にするようでいて、しかしコケてしまった時のフォローも両立させている率直で気持ちのいいコメントは、さすが銀魂作者と言える内容です。
(引用開始)
「ジャンプ」でやってる「幕末」の「侍」ものというキーワードで「るろうに剣心」並みの大作漫画と勘違いした、こんな豪華なスタッフとキャストが集まってくれました。メンバーが豪華だろうと原作が原作ですから基本泥舟。全員銀魂と一緒に死んでもらうことになりますが(中略)そんな人たちの作るまた別の形の銀魂ならコケてもいいから見てみたいな、見てもらってもいいかなと思ったのが実写化をうけた側の率直な気持ちです。
(引用終わり)
少し前ですが、「これはちょっと違うのではないか?」と話題になった日本の漫画原作の映画といえば「進撃の巨人」でしょう。映画評論サイト「映画.com」の評価は前編5点満点中2.7、後編2.4。結構低いですね。原作者が自身の漫画と比較している『るろうに剣心』の実写映画化はまあまあ成功してるようで、2012年に公開された第1作は3.5、2作目の『京都大火編』は3.8、実写映画最終章となる『伝説の最後』編は3.7と、実写映画化された作品としては高い数字を記録しています。
(画像は映画.comより)
しかし、基本的に実写映画化=駄作化というイメージがファンの間では広まっています。2004年の『キャシャーン』(2.6)2006年の『テニスの王子様』(2.0)2013年の『ガッチャマン』(2.3)そして実写映画化した作品の中で徹底的な低評価を獲得した2004年『デビルマン』(1.2)など、ファンですら「これは…」と思ってしまう内容になってしまった作品があまりにも多いため、実写化というのは非常に危険な橋を渡るようなものであるというイメージが持たれています。(カッコ内の数字は映画.comの評価です。)
実はビジネスとしてはコケにくい実写映画化
しかし、実は実写映画化というのは作品の内容的に低評価が下されてしまっても、ビジネス的には失敗しにくいという特徴があります。このことについてはラクジョブ新聞で、『鋼の錬金術師』の実写化が決定したというニュースが発表された時期に取り上げています。
SNSや映画評論サイトで下される評価とは裏腹に、結局見に行ってしまっている人は多いようです。アニメゲーム漫画ファンからすれば、漫画からアニメやゲームになったり、アニメからゲームや漫画になったりというようなメディアミックスであれば、実写映画化ほど「やめておいたほうが良いのでは?」とは思わないでしょう。しかし、これだけ低評価の「進撃の巨人」は制作費を回収していると予測されています。予算を多く見積もって20億円をかけていたとしても、前編32.5億円、後編16.8億円の興行収入を記録していますから、ビジネス的には成功だったのです。もちろん『デビルマン』(制作費10億 興行収入5億)のような失敗例や、『テラフォーマーズ』など雲行きがあやしい作品もあります。しかし、実写映画化の強みとして、2次利用があります。セルやレンタル、パチンコ化などの2次利用によって挽回し、制作費分は回収できることがある程度担保された上で実写映画化が企画されることが多いのです。
原作者はビジネス的に弱い立場?
実写映画化に対して否定的な方々はもちろんいらっしゃるでしょうが、このような背景から実写映画化企画というのは無くなりにくいのです。さらに、原作者は映画化の際に金銭的リスクは負いません。原作使用料をめぐる問題がテルマエロマエの実写映画化の際に話題になりましたが、原作者が出資する!などということにならない限り、ビジネスという面で原作者の立ち位置というのは非常に弱いのです。日本の映画興行収入はここ数年約2000億円で10年ほど横ばい状態が続いており、新しい作品を作るということの方がリスクであるため、いかに売れている原作を獲得するかというのが重要視されてきてしまっているという現状もあるとのこと。ファンの期待を裏切る作品が多く出てきてしまっているのも事実ですから、クリエイティビティとビジネスの両立が目指されるべきです。しかし新しい映画や、原作だとしても新しく脚本を1から作るということはコストがかかるため、あまりやりたがらない流れができてしまっているのです。
今回の『銀魂』の監督は『勇者ヨシヒコシリーズ』や『変態仮面』などでメガホンを取った福田雄一監督。ヨシヒコシリーズのゆるさを活かしつつ、原作の持つ畳み掛けるようなギャグの応酬をどこまで再現できるかというところが見どころかと思います。否定的な意見の多い銀魂実写化ニュースですが、私は原作ファンとしても、実写映画化作品マニアとしても非常に楽しみな映画です。空知先生もあのようなコメントをされていることですし、百聞は一見に如かずですから、ファンの予想を良い意味で裏切ってくれることを期待しています。
記事を読んでいただきありがとうございました!