日本アニメータ・演出協会(JAniCA)は、この度、5月28日に「デジタル作画勉強会「CLIP STUDIO PAINT 最新アニメ機能セミナー」を開催することを発表しました。今回は、こちらのセミナーとご紹介をしつつ、昨今のアニメ業界の作画の問題に関して書かせていただきました。
『デジタル作画勉強会「CLIP STUDIO PAINT 最新アニメ機能セミナー」』開催のお知らせ
https://www.janica.jp/course/digital/csp-seminar.html
引用始め
JAniCAでは、色鉛筆の生産終了に関わる対応や、 作画部門へのデジタル化対応の一環として「ACTF 2016」の開催など、 昨今の業界が直面する問題・課題に対して業界内外の多くの方々と連携し、様々な取り組みを行っております。
今回は、現実的な商業アニメの制作体制に即した機能の開発を長年続けている 株式会社セルシスのご協力により、 CLIP STUDIO PAINTのアニメ制作機能の解説セミナーと、 今後の機能開発に向け、アニメーター・アニメーション制作会社関係者を交えた 意見交換会を実施することといたしました。 皆様のご参加を心よりお待ちしております。
引用終わり
アニメの作画事情
日本のアニメ産業は、来年でちょうど100周年という節目を迎えます。そのような長い歴史の中で、アニメ制作における技術や手法はどんどん変化してきました。最初はセルと呼ばれる透明なフィルムに線を引き、絵の具で色を塗るという形式でした。それからコンピューターの発達とともに色彩の着色や効果付け、編集などの工程がどんどんデジタル化されていきました。しかしながら、そんなデジタル化の流れの中で唯一アナログの部分として残っているのが、作画部分となります。今放送中のアニメでさえ、大半が紙と鉛筆を使った作画で作られています。アニメーターとして長年働いてきた方から見れば、慣れ親しんだ紙と鉛筆の感触や、デジタル作画を導入する上での機材の購入費など様々な理由で作画デジタル化が進んでいません。また、作画監督クラスとなると企業に所属せず、在宅でアニメのお仕事をするケースも多々あるため、余計にデジタル作画が浸透しにくいという状況となっています。
色鉛筆問題
デジタル作画への移行がなかなか進まない中、昨年末にある事件が起こりました。それが色鉛筆の生産終了という問題です。アニメの作画において必須となるのが、紙と鉛筆です。そして作画において、キャラクターの髪の毛なのか、影なのか、輪郭なのかを判断するために、複数色の色を使用します。そんな重要な道具である色鉛筆が赤色を除いて生産を終了するということを三菱鉛筆が発表しました。しかもアニメーターが使う色鉛筆は、一般に使用されている色鉛筆よりも芯が硬く作られているものなので、なかなか在庫の確保が難しくアニメ会社によっては作画が書けなくなるのではないかということが問題となりました。最終的には、JAniCAの働きかけによって、「水色、黄緑色、橙色」に関しては当面、継続販売をすることが決まりましたが、三菱鉛筆株式会社の経営戦略変更による、再びの生産終了や、製品価格の上昇という可能性を常にあることになります。
アニメ業界において、この色鉛筆の問題も含め、紙と鉛筆による作画は、アニメ会社の経営を圧迫している部分となります。在宅で作画を書いているアニメーターに対しての回収作業、作画をスキャナーで取り込み作業など、この部分でのやり取りによる時間や人件費は小さくありません。だからこそ地方でも制作体制さえ整えば経営が可能なのです。
今後アニメーターを目指す方に対して
現在のアニメーターの多くは出来高制が多いため、うまく速く書くことが重要です。そのため、慣れていないタブレット端末への変更で、書く速度が落ちてしまったり、クオリティーが落ちてしまうのではないかという不安が先行し、デジタル作画が浸透しない状況です。しかしながら大手のアニメ会社の中には、デジタル作画部門を立ち上げ、研修や実績を積ませることにより紙と鉛筆で書くのとほぼ同じ速度とクオリティーを実現しています。あとは、作画の最終チェックを行う作画監督や総作画監督クラスの方まで成長する方が現れれば、アニメの完全デジタル化が実現するでしょう。
デジタル作画でスピード出世
アニメ業界において作画は、動画、原画、作画監督と出世をしていきます。しかし、その道は非常に長く、原画としてアニメのエンドクレジットに載るのに約10年かかると言われていました。作画用のソフトウェアを自由に使いこなすことにより、入社後1年半でエンドクレジットに載るような原画マンになったりというケースもあります。以前では考えられないスピードでの出世です。それが可能となっているのは、もちろん本人の努力やセンスも必要となってきますが、これからのアニメ業界を支える次世代のクリエイターということを期待し、より多くのチャンスを与えているからではないでしょうか。
セミナー詳細(プレスリリースより)
https://www.janica.jp/course/digital/csp-seminar.html