アニメ制作会社CygamesPictures設立!ゲーム会社がアニメ事業部とアニメ制作スタジオを立ち上げた理由を考えてみる

アニメーション制作を専門的に行う株式会社CygamesPictures(以下、サイゲームスピクチャーズ)を2016年4月5日(火)に設立されました。「神撃のバハムート」「グランブルーファンタジー」「アイドルマスター シンデレラガールズ スターライトステージ」など大ヒットスマホゲームを次々に生み出す
株式会社Cygames(サイゲームス)。今回はそのサイゲームスのアニメ事業部設立とアニメ制作スタジオ設立について考えてみたいと思います。

CygamesPicturesなぜソーシャルゲームはアニメ化されるのか

まず第一にソーシャルゲームがアニメ化されること自体は珍しいことではありません。古くは、「探検ドリランド」から始まり、「アイドルマスター シンデレラガールズ」「ディバインゲート」「戦国コレクション」「ガールフレンド(仮)」「艦これ -艦隊これくしょん-」などこれまでも様々なソーシャルゲームがテレビアニメ化されています。「パズドラ」のTVアニメも2016年7月4日より放送開始が発表されています。また、「モンスト」もYouTube上にてアニメ配信がされており、ソーシャルゲームのアニメ化は年々増えています。

ソーシャルゲームはユーザー数が命です。もちろんユーザーはついた後の課金率や継続率などのKPIを見ることも大事ですが、何よりまずダウンロードして遊んでもらわなければ始まりません。新規ユーザー獲得の一番のタイミングはゲームリリース直後です。そのためにもリリース前からテレビCMなどを打って、事前登録を増やします。そして、無事リリースしてある程度の人気も獲得できたところで、さらに認知を増やし、ユーザー数を獲得するための方法がアニメ化です。テレビアニメになることで、それまでリーチできなかった層にも興味を持ってもらうことができます。また、すでにプレイしているユーザーに対してもファンコンテンツの提供としてファン化を推し進め、継続率を上げるための施策にもなります。

Fotolia_97834378_Subscription_Monthly_M-1024x681ソーシャルゲームアニメ化の問題点

では、世の中にあるソーシャルゲームの全てがアニメ化されてもいいじゃないかと思うかもしれませんが、実際にはそうなっていません。ソーシャルゲームがアニメになるまでにはいくつかのクリアしなければならない問題があるからです。

まずテレビアニメになったからと言って、アニメとしてのクオリティが低い場合、アニメファンは辛辣な評価を下します。アニメファンにとっては、ソシャゲを宣伝するためにアニメを作ったと思われるだけで興味が薄れてしまいます。むしろソシャゲ宣伝のためのアニメと見なされてしまえば、それだけでバッシングの材料にもされてしまいます。ソシャゲをアニメにするときは、ソシャゲのためのアニメではなく、アニメのためのアニメでなければ、アニメファンは納得してくれません。

また、現在アニメ制作会社はどこも大量のオファーを受けています。有名スタジオ、大手企業になると、2018年まで制作ラインが埋まっているというアニメ会社も少なくありません。例えば、今勢いがあるソシャゲをさらにプッシュするためにアニメ化という手法を用いようと思っても、2019年以降、頑張って2018年、ラインが急に空いたなど運が良くて2017年です。しかし、アニメ化したいという声が上がるタイミングは脂が乗っている「今」のタイミングです。恐らくアニメが好きな方であればソシャゲ原作のアニメ放送に関して「ちょっとタイミングが遅いんじゃないの?」と思ったこともあるかと思いますが、それはアニメ制作上の問題です。企画から放送までどんなに短くても1年はかかります。ソシャゲ原作でアニメを初めて作る会社は大概時期を逃してアニメを作るしかなくなってしまいます。

また、30分のテレビアニメを1クール(12話~13話)作ろうと思えば、最低でも1億円以上かかります。クオリティを高くしようとすれば、2億円でも3億円でもかけられます。ゲームが大ヒットしている会社であれば、どうということもない数字かもしれませんが、ゲームが売れるかどうかわからないイニシャルのタイミングからアニメ化を盛り込んでおくことは少なからずリスクになります。そうなるとどうしてもゲームリリース後の動向を見て十分なヒットを確認してからでなければアニメ化の話を進められません。そうなると先ほどの時期を逃してしまうという事態にも繋がります。

Cygames_mangaサイゲームスの狙いはどこにあるのか

これはサイゲームスさんから直接話を聞いたわけではありませんが、サイゲームスのアニメ事業部、アニメ制作スタジオ設立には3つの意図があるように感じられます。

1つは、自分たちで自由にできるアニメ制作ラインが欲しいということ。アニメ化したいというタイミングに合わせて、アニメを作り出せる体制はソシャゲ原作でアニメを作る上で最も大切なポイントの一つです。今後開発する大型タイトルに関しても、初めからアニメ化をゲームの企画にも盛り込み、リリース直後にアニメ放送を合わせるなどして連携のとれた高いPR効果も狙えます。

2つ目は、自分たちの好きなようにアニメが作れるということです。アニメの製作資金調達には、製作委員会方式が一般的ですが、製作委員会になると複数社の利害が関わってくるので、必ずしも思ったようにアニメを作ることができません。サイゲームスには、「神撃のバハムート」がそうだったように、1社提供でアニメを制作できるだけの十分な資金力があります。アニメの製作から制作までを一手に引き受けることでより自社の狙いに近いアニメを作ることができます。

3つ目が、自社IPの創出です。サイゲームスは、アニメ事業部、アニメ制作スタジオに続いて、スマートフォン/PC向け漫画サービス「サイコミ」のサービスも発表しています。ポケモンや妖怪ウォッチ、パズドラもそうですが、メディアミックスによって、その作品の世界観そのものを強く印象付けることができれば、ゲーム会社はゲーム会社といてではなく、コンテンツホルダーとしての利益を得ることができます。コンテンツホルダーであることの利益は、ゲームパブリッシャーであることの利益のさらに一つ上にあります。実際ゲーム会社から話を聞くと、ゲームを作ることのさらに先にIP・世界観を作ることを目標している会社も多いと感じます。サイゲームスもそのためにゲームだけでなく、アニメ、漫画も包括的に自社展開を進めているのではないでしょうか。

サイゲームスの自社アニメ、自社漫画の取り組みは今後のゲーム業界大きな可能性の一つでしょう。今後も動きがあれば、ラクジョブ新聞でも取り上げたいと思いますので、その際にはぜひそちらの記事も読んでみていただければと思います。

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