アニメゲーム漫画業界には少なからず、縦割りの構造があります。特にアニメ業界、ゲーム業界で顕著ですが、大本にクライアントになるアニメ製作会社やゲームパブリッシャー、ゲームデベロッパーがいて、そこから元請け会社、グロス請け会社、専門制作分野の下請け会社へと制作が発注されていきます。今回はその中で営業が上手くラインが埋まりやすい会社も営業が苦手でラインが空きがちな会社もあります。今回は制作の前提ともなる営業についてです。
なぜ現場上がりの人間は営業が苦手な人が多いのか
アニメゲーム漫画業界問わず、制作現場上がりで独立して自分の会社を立ち上げる社長さんは多くいらっしゃいます。実際、業界内で起業している人たちの8割近くは現場からの独立型の社長さんです。会社という枠組みの中で思うように仕事ができない、作品作りができない、一念発起してでも会社を作って自分たちの作品を作りたいという思いは決して否定されるべきものではありませんし、業界発展を願うビ・ハイアとしても是非とも応援したいとも考えています。
しかし、実際に会社を立ち上げると、作品作りの前に資金繰りが目の前に立ちはだかって思うように仕事できない、案件を取ってラインを埋めるために初めて営業という課題に直面する社長さんが多くいます。制作開発現場では第一線で何でもできたような人でも営業現場でも同じように上手くいくとは限りません。独立される方には、メーカーやパブリッシャーなど、それまで発注する側で、クライアントに直接営業して案件を取ってくるという経験をしたことのない人もいます。実際、営業という壁にぶつかる社長さんは少なくありません。
不景気のときこそ試される営業スキル
それでも、業界全体が人手不足なのであれば、営業から受注につなげることも可能ですが、ちょっとしたきっかけで業界動向が大きく変わってしまうと、それだけで途端に仕事が薄くなってしまう会社も少なくありません。業界の景気が良くなくなった時に会社も一緒に傾きましたでは済まされないわけで、そのためにラインが埋まっているようなときでも常日頃から準備を怠らないことが大切になります。
例えば、昨年遊技機業界を襲った規制や釘問題は、遊技機業界に大きなダメージを与え、アニメ業界、ゲーム業界にもその余波を残しました。それまで遊技機3DCG制作をメインにしていた会社でも、ゲームの3DCG制作の割合を増やそうとする会社が多くありました。実際、ビ・ハイアにも営業のご相談をいただいて、クライアントになりそうな会社や協力関係になりそうな会社をご紹介させていただきました。やはりその中でラインを空けてしまった会社とラインを埋めることができた会社に分かれました。その違いはどこにあったのでしょうか。
まずはとにかく信頼関係
クリエイティブの現場にいた人にとっては、とにかく制作物が第一で、自分たちが何を提供できるのかから考え始めます。例えば、ゲームプログラマー出身の方であれば、ゲーム開発には自信があるわけですからそこをとことん主張します。しかし、クライアントとなる企業が相手を制作スキルの高さだけで見ているのかというとそうではありません。
クライアントからすれば、大切なのは自分たちのニーズを充足させてくれるかどうかです。一見すると、発注する会社が何をできるかということと変わりないように思えますが、実際には少し違います。クライアントが求めるものとピッタリ合致するものを持っていないといけないのかというとそうではありません。むしろ条件に必ず全てが合う会社はそもそもほとんど見つかりようがありません。クライアントとなる会社もそこを探しているわけではありません。
クライアントが発注したいと思う会社とは、信頼できる会社です。もちろん最初は基本的に信頼関係0のところからスタートするわけですから、信頼を積み重ねる必要があります。「ウチがこれができるから信頼してください」という会社と「まずは信頼していただくためにここから始めされてください」というスタンスの会社では、どちらが発注しやすいかは明白です。
信頼関係の上にも信頼関係
そして、一度信頼してもらって仕事を発注してもらった後に信頼を裏切らないことが大切です。例えば、納期を守る、クオリティを保つ、マメに連絡する、そういった日々の積み重ねが信頼を積み重ねます。それ以外にも、案件があるときだけでなく近くに寄ったから顔を出す、情報交換でこまめに時間をとる、ランチミーティングや飲みに行くなどしてできるだけ接触頻度を高めてください。まさしく同じ釜の飯を食ったなれるかどうかが大切なポイントです。その積み重ねが信頼関係に繋がります。
覚えてもらう、信頼してもらう、だから仕事を発注しようと思った時にもすぐに思い出される人になりますし、段々と大きな発注な太い発注にも繋がります。逆に言うと、最初は小さな案件や相手先常駐の案件でも手を抜かないこと、そこから信頼をスタートさせることが大切です。こちらの想定している条件に合わないかどうかは相手には関係ありません。0.8ぐらいしか条件にマッチしないからと言って話を流してしまうと、将来的に2や3に繋がるようなきっかけもなくしてしまいます。会社を大きくさせるため、自分たちの作品を思うように作るためにも、まずはぜひクライアント視点に立って、クライアントが何を求めているのかという視点から常にそこのツボを押さえるような営業、制作が大切であると肝に銘じてください。