2016年4月13日の日経新聞朝刊には、以下のような記事が掲載されていました。
賃金格差を考える(中)40~50代男性の下落顕著
初任給は右肩上がり 上野有子 一橋大学准教授
大企業の春季労使交渉の回答結果が公表され始め、名目賃金の動向に関心が集まる時期だ。本稿では神林龍・一橋大教授との研究成果を基に、1990年代半ば以降の賃金変化と、賃金分布の変化の動向の両面から論じたい。
研究では厚生労働省「賃金構造基本統計調査」のマイクロデータを集計し、「誰の賃金が上がっているのか」に着目した。分析の対象とした期間は2012年夏までで、安倍政権の経済政策「アベノミクス」の開始以…
今回は正社員として働き続けることが本当に正しいことなのか、賢いことなのかについての話で。就職転職を考えている方が自分の40歳、50歳を考えながら読んでみてください。
正規、大卒男性、フルタイムの基本給
新聞の記事の中では、正規、大卒男性事務職、フルタイムといういわゆる一般的なサラリーマン男性に対象を絞って、年齢別の基本給の推移がグラフとなっていました。93年の水準としたそのデータによると、2003年までは、新卒、30代、40代、50代変わらずに基本給が93年よりも高い水準を維持していましたが、2003年に40代、50代の基本給が93年の水準よりも下回り、それ以降も減少を続けています。2012年の50代を見てみると、93年の50代と比べて8%近くも減少していることが分かります。30代男性も、93年比ではまだ高い水準を保っていますが、2000年に入ってから徐々に減少を続けています。新卒男性は押しなべて上昇傾向にあります。
就職時期、「正社員で会社に入社することはいいことだ」と思って就活に臨む人は多いですが、数字を見てみると、正社員で会社に入社して働き続けたとしても、年々もらえる給料は少なくなっているということが見えてきます。若者の非正規労働も増える中で、正規で働くことを条件にすることが間違いではないかもしれませんが、正社員で働くことができればそれで安心という世界ではもうありません。年功序列の崩壊はここからも見て取れます。
「3年は働け」の本当の意味
新卒で入社すると、まず3年は同じ会社で働いてみろと言われることが多いですが、その3年とは何を基準にしているのか考えたことはありますか。簡単に言ってしまえば、3年は作業者として最低限仕事のスキルややり方を身につけられる年数ということです。実はこのことは新卒の給料が高く、年齢を重ねても給料が高くならないことにも関連しています。
まず企業はなぜ新卒を採用するのでしょうか。「即戦力」という言葉が良く叫ばれるように、企業利益を考えるのであれば、教育の期間はできるだけ短くして、採用から収益をあげられる人材になるまでの期間を短縮したいと考えるのは当然です。その結果、転職市場で、中途経験3年以上の即戦力が求められます。
しかし、企業としてどうしても手放したくないほどに優秀な人は転職市場に現れること自体非常に稀です。いわゆる「幹部候補」とも言われるように、新卒のポテンシャルは中途経験者以上に高くみられることが多いです。大手企業を中心として、新卒から生え抜きで有名ゲームのプロデューサーに上り詰める人もいるように、即戦力以上の活躍が新卒には期待されます。
だからこそ、新卒の採用には、多額のコストをかけてでも毎年力を入れる企業があります。逆に現場業務の経験値で言えば、5年の経験者でも20年の経験者でもスキルに大差がないことがほとんどです。20年プレイヤーが5年プレイヤーの2倍、3倍の生産性を持っているのであれば話は別ですが、即戦力の一つの基準が経験3年であるように、必ずしも40代、50代が転職市場で歓迎されることがないように2倍のコストをかけてでも採用したいと思われる40代、50代は多くありません。
本当に大切なのは3年目以降の働き方
正社員で働き続けることが必ずしも安定ではなくなり、30代と50代の差もほとんどなくなり、一昔前の考え方は通用しなくなりつつあります。今でさえその状況なのですから、自分が50代になった時を想像してみれば、正社員という立場の上に安住して働き続けることのリスクに目を向けた方が将来から見て賢明な選択ができるのではないでしょうか。
その視点があれば、例えば、フリーランスとして独立して自分の腕1本で食べていけるようにする、起業して自分の責任と権利、自由を拡大させて時代に対応していく、という選択肢も見えてくるのではないでしょうか。あるいは正社員で働くにしても、社内の責任ある立場になってキャリアを積み重ねる、正社員として働きつつも副業で収益源を増やしておくということもできます。
弊社ラクジョブの専門領域であるアニメゲーム漫画業界もクリエイティブという業界であっても3年が一つの分岐点です。3年経っても20年経っても評価が変わらない人もいます。それどころか変化の激しい業界の中で、制作に必要なスキル、勘所をキャッチアップできていないために時代にも取り残されることにもなりかねません。どんな働き方を選ぶにしても変化を受け入れ、自分も変化を続けない限り、自分が求める普通さえも維持できない世界です。逆に言えば、若い人もにも経験を積んだ人にも平等にチャンスがある世界です。ぜひこれを機に50代60代でどんな働き方をしていたいのか、そのために今何をしているべきなのかを考え直してみてください。