2016年3月11日の日経新聞に就職年齢関係の記事が掲載されていました。今回は、アニメゲーム漫画業界の就業年齢について取り上げたいと思います。
「就職年齢制限の見直し、自民が検討着手 高齢者の社会参加促す」
まずは、日経新聞の冒頭を取り上げます(WEBでも公開されています)。
自民党は10日、就職時の年齢制限見直しなどを検討する「差別問題に関する特命委員会」の初会合を開いた。平沢勝栄委員長は「高齢者が社会参加するために、どういう年齢差別を撤廃する必要があるのか検討していく」と述べた。一億総活躍社会の実現へ向けた取り組みの一環で、7月の参院選の公約に反映していく考えだ。
米国などは採用時の年齢制限を設けることを厳しく制限している。日本も年齢制限は原則禁止されているものの、多くの例外を認めており、年齢制限のある場合が多い。
平沢氏は「地域を回ると高齢者が年齢のせいで働く場が閉ざされているという話を聞く」と指摘した。定年制との関係なども含め、年齢制限をどう見直すか検討する。同委員会は人種差別的なヘイトスピーチ(憎悪表現)の規制や被差別部落問題の解決へ向けた検討も進める。
記事の中では、高齢化社会に向けた取り組みが期待されているとの見方ですが、企業の経営者や人事担当からすると、「高齢者の採用は現実的でない」と考えるのではないでしょうか。
年齢制限の根底にあるもの
確かにこれからの日本は人口動態から見ても少子高齢化の進行は確実です。「高齢者も働いた方が経済的な国力も増強される」との見方は間違っていないと思います。しかし一方で、アニメゲーム漫画業界は若い人たちが多いです。30代で大企業の社長をやられている方もいますし、20代で起業する人もザラにいます。特にゲーム業界はIT業界に近い雰囲気の「ベンチャー企業」も多いです。
社長や人事担当から話を聞くと「年齢相応の働きができるのであれば年齢は問わない」とよく聞きます。「年齢相応」とはどういうことか。求人サイトの運営の肌感覚でいうのであれば、40代以上の方であれば、まず間違いなく部門のトップとしてスタンドアローンで働くことが求められます。30代であっても数年の経験は必須でしょう。未経験者で勝負ができるのは20代までです。もちろん例外もありますが、その場合にも+αの能力があっての話がほとんどです。
40歳未経験者と20歳新卒どっちが魅力的ですか?
では、そんなベンチャー企業の若手社長の立場になって考えてみます。30代で起業し、人数規模は数十人、みんなのおかげで会社も上手く回っている、そんな会社に40代で今まで全く関係のない業界で働いてた未経験者と20代で専門学校でしっかり勉強もして、自分でも作品を作って、「自分の作品を世に出したい」という意欲のある新卒とどちらを採用したいか客観的に考えてみると現実的な答えが見えてきます。
おそらくこの年齢差別の撤廃は、高齢者をアニメゲーム漫画業界に入れようという意図ではないだろうと考えても、高齢者が新しく働けるフィールドは極々限られたものになるでしょうし、若手上司に年上の部下という構図が今後増えていくでしょう。
全くスキルのないやらされ新卒とスキルもやる気もある外国人どっちが魅力的ですか?
そしてもう一方で、外国人労働力の流入も増えています。これはアニメゲーム漫画業界でも顕著な現象です。アジア圏を中心として制作開発のオフショアはもはや当たり前の時代になりました。そして、海外から日本に来て日本の制作開発会社で働いている外国人も大勢います。経営者の方から話を聞いても「彼らは上手いしやる気もある」と言います。
日本には新卒の一斉採用という慣習があります。今年も3/1を皮切りに就活を始めた学生も多いでしょう。また、それ以前から準備を始めていた方もいるかと思います。しかし、就活の解禁時期自体経団連の決めていることでしかなく、中小企業が中心のアニメゲーム漫画業界では、本来就活の時期と関係なく採用を行っている会社がほとんどです。
しかし、学生は一般的に就活時期に就活をしようとします。この時点で大半の学生は「働きたい」のではなく、「就活がしたい、内定がほしい」人がほとんどになっています。就活時期でなくても採用している会社はありますし、求人サイトに載ってなくても応募を受け付けている会社も多くありますし、ましてや企業HPに採用情報がなくても実は新卒を採用したいという会社も山ほどあります。逆にやる気のある学生だけを見たいからあえて求人サイトに求人を出さない会社もあります。
これからの時代、日本は否応なく国際社会の一部として、外国人たちと同列のフィールドで戦う必要があります。就活ありきではなく、求人サイトありきではなく、「働く」ということそのものを考えた上で最適な手段を選べる「やる気のある日本人」であることが「日本で働きたいやる気のある外国人」と対等に勝負するための最低条件になる日は遠くないでしょう。