適合試験で異常事態発生
記事を読んでいただきありがとうございます。これまで取り上げてきたパチンコの釘問題と新基準によるゲーム性の変更により保通協の適合試験で異常な事態が発生しています。保通協が3月2日に発表された型式試験等の状況についてみてみましょう。
引用開始
それによると、適合数はパチンコが結果書交付73機種のうち28機種(前月比2機種増)、パチスロが結果書交付69機種のうち29種(同比4機種増)と、1月とほぼ横ばいという結果。適合率ではパチンコが約38.4%、パチスロが約42.0%となった。また、受理件数はパチンコが76件(同比7件増)、パチスロが48件(同比3件増)。
パチンコの適合率は40%を割り込み、パチスロの適合率を下回るという異常の事態となっている。
引用終了
パチンコ業界誌『遊技日本』 パチンコ適合率、30%台に より抜粋
パチンコの適合率は、2015年9月が約83.1%、2015年10月が約67.3%、2015年11月が60%、2015年12月が56%、2016年1月が約48.1%、2016年2月が約38.4%で推移していて、5カ月連続で適合率が下落する結果となっています。これまでの適合率は80%前後を維持しており、瞬間的には9割以上を超えるときもありました。適合試験を受ける台数もパチスロより多いときもあり、それだけの台数が基本的には通過するということで、パチンコはどんどんと適合を受けて新しいラインが立ち上がっていきました。ところが一気にここまで適合率が下がってしまったということは、それだけ試験が難しくなったのかというとそう言うわけではありません。ではなぜここまで毎月毎月低下していくことになってしまったのでしょうか。
先にも述べたように新基準が示され、これまでMAX機と呼ばれる大当たり確率400分の1近くの台がすべて撤去対象となり、大当たりの確率も320分の1まであがりました。つまりそれだけあたりやすくなってしまったといえます。プレーヤーは大当たりで一気に回収するというか、投下したお金以上に返ってくることを期待して打っているので、あたりやすくなる上にせっかく大当たりしても一気に回収するということができなくなってしまいました。さらに釘の変更も明確にできなくなり、本来はスタートチャッカーに入って大当たりを引き当てる以外は玉が減っていくだけだったところが、いくつか入賞口への釘が開いたままになることにより、細かく玉が戻ってくることになって、その結果大当たりの賞球も減ってしまいます。これまでのユーザーの期待から離れた方向に基準が変わったことにより、客離れがいっそう進むことも予測されます。
ユーザー離れを食い止めるために
それに歯止めをかけるというか、これまでのユーザーの期待に応えるべくメーカー側も新基準をクリアしつつもそういった大当たりによって一気に回収できるような荒れた台を狙ってゲーム性の調整を行います。これは過去にも説明した話の繰り返しになりますが、適合試験には役物比率が60%以下という規定があり、それをクリアしないと適合試験もパスできません。荒れた台というのはそういう意味では役物比率からすると60%を余裕で超えるようなものが当たり前です。実際はそういった荒れやすい設定で設計するのですが、適合試験中にその60%を超えなければいいわけで、そういうぎりぎりを狙って仕様を決めて制作しています。
適合率が下がることにより新しいプロジェクトの立ち上がりも遅くなるため、遊技機業界での液晶開発をメインとしている会社にはまだまだ厳しい状況が続くと思います。もちろん中には新しい台の制作のため、仕事の相談も出てきてはいますが、それでも3年前の状況に戻るのはかなり厳しいといえます。今、遊技機業界で継続して仕事を取れている会社は強いですが、物量が一気に減り仕事を求めている会社は岐路に立たされています。遊技機業界もゲーム業界も映像業界も、いずれの業界もそこが好きでいい作品を作り出したいという思いがなければ仕事が成り立ちませんので、会社としても現場スタッフとしてもまずはそれを問いかけ、それでも遊技機がやりたいと思うのあれば道が開けてくるのではないかなと思います。いずれにせよ、業界を発展させるための手間は惜しみませんので、何かお役に立てることがあれば気軽にお声掛けくださいませ!