本日2016年2月5日の日経の一面は、「シャープを鴻海が買収へ 7000億円、機構案上回る」という記事でした。また、三面には、「鴻海、脱アップル依存狙う 将来の成長に投資」という記事も併せて掲載されていました。シャープや東芝を始め、「ものづくり大国日本」の立役者になった会社が危機に瀕しています。果たしてこれらの会社に何が起こっているのでしょうか。
かつて「ものづくり大国」と呼ばれ、「日本製品は安くて高品質だ」と言われ、世界中でMADE IN JAPANが求められていました。ソニー、東芝、シャープなどの家電メーカーもその中で世界中から認知されるようになり、会社としても大きくなっていきました。
しかし、海外諸国の台頭により、「安くて高品質」はもうすでに通用しなくなっています。値段では、海外に圧倒的に負け、品質に関しても、負けているとは言わないまでも、「値段の割にコスパがいい」と海外製品が選ばれてしまいます。シャープや東芝の現在の状況は、消費者の購買心理から考えて自然なことです。
台湾企業の鴻海がシャープを買収した理由とは
今回、シャープの買収に名乗りを上げた鴻海(ホンハイ)精密工業は、電子機器の受託製造サービス(EMS)の世界最大手で、15年12月期の連結売上高(速報値)は前の期比6%増の4兆4830億台湾ドル(約16兆1400億円)となっています。対するシャープの売上は、連結:2兆7862億5600万円(2015年3月期)となっており、約5.8倍の差があります。
鴻海は、アップルのiPhoneやソニー、任天堂の各種ゲーム機や、ソフトバンクのヒト型ロボット「ペッパー」なども手掛けています。今回のシャープ買収では、スマホ用の中小型液晶パネル事業の技術力の高さに期待を示しており、アップル以外の新顧客の開拓を目的としています。
世界最大手企業群による日本分割
しかし、今回の買収から考えられる未来として、「日本分割の未来予想図」が立ち上がります。昨日、TPP署名式がありました。関税も撤廃され、日本はこれから本格的に国際競争に巻き込まれていきます。関税が撤廃されてしまえば、これまで以上に安価な海外製品が日本に流れ込んできます。日本製品が価格競争に巻き込まれてしまったら勝ちようがありません。
その中で起こる現象が今回の「最大手への技術力の集約」です。日本企業は、かつてのものづくり大国が示すように技術力を持っています。一方で、その技術力を活かせるだけの販売能力が欠けています。アップルは、技術力ももちろんありますが、それ以上にブランディング、デザインなど、総合的な販売力が秀でています。販売で最大勢力となり、業界最大手となったこれらの会社が次に考えることは更なる技術力の強化です。
彼らからすれば、古くから技術を蓄積し続けている日本企業は絶好の狙い目です。技術力を自社に取り入れ、さらに業界内でも地位を確固たるものにしていくでしょう。ソニーが海外企業に買収されてしまう日も遠くないかもしれません(すでに、株主の大半は外国人ですし…)
アニメゲーム漫画も例外ではありません
そして、これは何も家電に限ったことではありません。ソニー、任天堂、スクエニ、コナミが海外企業に買収されることだってあり得ない話ではありません。あるいはコンシューマーゲーム開発事業だけ売却ということも考えられると思います。コナミが海外企業と協力してメタルギアを開発などもあり得るはずです。アニメや漫画も著作権ごと買収されて海外主導で展開が進むかもしれません。ゴジラがGODZILLAになったよにアメリカナイズされた作品が作られるかもしれません。
しかし、何にせよ、日本が培ってきた、蓄積してきたものには、それだけの価値があるということです。TPPはやってきます。日本の人口は減っていきます。それでもこれまで日本が育ててきたものは大事にされてほしいと考えています。だからこそアニメゲーム漫画業界で働くということと世界に目を向けるということは、自分事としてではなく、日本と世界の物事として大切なことだと思っています。今回は、シャープの買収から話を広げてみましたが、この記事を読んでくださった皆さん一人一人にも、今後の日本と世界に考えを向けてみていただければと思います。