アニメゲームマンガ専門 ラクジョブ新聞 > 求職者の方へ > 終身雇用制度は本当に崩壊しつつあるのか? いくらビジネス書を読んでも、将来への不安がずっと消えないあなたへ

アニメゲームマンガ業界 就転職に役立つ情報満載!

2016.06.06 終身雇用制度は本当に崩壊しつつあるのか? いくらビジネス書を読んでも、将来への不安がずっと消えないあなたへ

最近頻繁に耳にするようになった話題があります。それは 「日本では終身雇用が終わりつつある」という話題です。これから日本人のビジネスマンは、会社に依存するのではなく、自分で自分のキャリアを見定めて、進んでいく必要がある、というような主張を。皆さんも一度は、テレビで、雑誌で、耳にしたことがあるのではないでしょうか?

51xSIA-5WtL._SX303_BO1,204,203,200_こうした議論の中では、決まって終身雇用、年功序列型の日本の古い企業のあり方が批判されます。今の日本の経済の停滞感を生む元凶のように槍玉に上げられます。しかし、今批判にさらされている古い組織のあり方は、以前は理想的な会社のあり方として、世界的に称賛を浴びるものでした。日本の旧い組織のありかたは、アメリカ人の学者によって本の題材になり、ベストセラーになったこともあります。

アメリカ人の社会学者エズラウォーゲルという人の書いた「ジャパンアズナンバーワン」という本があります。これは1979年のビジネス書のベストセラーで、70万部も売り上げました。この本は、国土も狭く資源も少ない日本が経済成長に大成功した背景はどこにあるのかを解き明かした本でした。

「終身雇用制度」は、日本の会社文化を象徴する言葉です。「ジャパンアズナンバーワンの中では、終身雇用制度は、「年功序列型賃金制度」、それから「会社別労働組合制度」と並んで「三種の神器」といわれ、日本の経済成長の要因だと言われていました。「ジャパンアズナンバーワン」の中では、会社が日本人にとっての成功の原因であり、希望に溢れた場所として捉えられています。

1つの会社の中で、企業人しての自分を鍛え、同僚や上司とはまるで家族のような親密な関わりをもつ。上下の関係のハッキリとしたピラミッド型組織の中で、自分の人生をまるごと組織に預けていくような働き方は、仕事をルール通りドライにこなすアメリカ人にとって、とても珍しく映ったはずです。

しかしそんな輝かしき「終身雇用制度」も、最近では低く評価されるようになってきました。終身雇用制度はすでに崩壊しつつある古い制度であり、日本の停滞の元凶であると言われることも多くなりました。

実は日本はまだまだ終身雇用制度が一般的

図表1しかし日本人の終身雇用が崩壊しつつある、というのは本当なのでしょうか?そして、それは本当に日本人の望むものなのでしょうか?いくつかのデータを見てみましょう。まず、厚生労働省のデータですが、日本人の転職率について調べたものが左図です。これを見ると、日本人の転職率は1990年代から比べると、2005年までの間には微増はしましたがあまり変化は無いと言うことがわかります。

図表2また、正社員の数と、勤続年数については、どうでしょうか?総務省調べによれば(右の図を見てみて下さい)、正規雇用者の人数は1990年から2014年の比較でいうと減少傾向にはありますが、あまり大きな変化は無く、特に変化が大きいのは非正規雇用者の増加です。

また、日本人の平均勤続勤続年数についても見てみると、勤続年数が若年層においては微減しているが、高齢者では微増して図表3 いるということがわかります(左の図を見てみて下さい)。

これらのことから言えるのは、若年層を中心に確かにある程度の雇用流動化は認められますが、高齢者にはあまり影響はなく、全体としてはまだまだ長期雇用と低い転職率が一般的であるということです。つまり、実質的にはまだまだ、終身雇用制度は社会のスタンダードになっているのです。

終身雇用制度が攻撃される理由

では、いったいどうして、これほどに終身雇用制度は攻撃をされるのでしょうか?それに関連して、ウォールストリートジャーナル紙に、日本の雇用制度についての記事があったので引用しましょう。

ウォールストリートジャーナル紙 5月31日号
https://jp.wsj.com/articles/SB11290027141701334812004582099752798037864

時間厳守という習慣は(中略)まねし始めた海外の習慣の1つだ。産業経済を作り上げるには、生き方を変える必要があることを理解した支配エリートによって、文化に移植された作られた伝統だ。安倍晋三首相は、それに匹敵することを成し遂げようとしている。日本の経営文化を変えることで、投資、経済成長、世界的競争力を再活性化しようというのだ。

(中略)

首相の目からみておそらく最も重要なのは、企業は株主ではなく社員の為にあるという日本で一般的な考え方を終身雇用制度が助長していることだろう。首相が提案する労働市場改革は雇用主がより柔軟に雇用や解雇を出来る様にするもので、「これはわれわれが望む国のあるべき姿ではない」という異論に直面している。日本企業はかつてのように多くの社員に終身雇用を提供出来る余裕がもはや無いにもかかわらず、今もその制度に固執している。労働法の改正ではそれは変えられない。

(引用終了)

ウォールストリートジャーナルは、的確に日本の状況を表現していると思います。日本の企業は確かに全ての社員jpegを生涯にわたり養うだけの体力を失いつつあり、現在のままの長期雇用体制を維持することが難しくなりつつあります。それは誰の目にも明らかな事実です。そんな状況を乗り越えるために、昔ながらの終身雇用、年功序列の会社文化を克服し、もっとシビアな資本主義の社会に日本を変えていくこと。それが日本の政府の狙いです。

ウォールストリートジャーナルの記事が言うように、日本人の働き方は、指導者の意向によって決められてきました。いま書店に足を運んだとしても、日本の終身雇用制度を讃える本は滅多に見つかりません。代わりに書店に並ぶのは、会社の方針とは無関係に自分で富を作る方法や、自分でキャリアを見据えて、自立したビジネスマンであるための自己啓発本です。日本の雇用環境は10年、20年というスパンでは実質的にあまり変化がないのに、日本人のもつ価値観は着実に変わりつつあるのです。政府の意図は着実に身を結びつつあると言って良いでしょう。

51gl7KUw67L._SX345_BO1,204,203,200_遅刻も恋愛も、全ては明治以降に出来上がった作り物

安倍さんがそこまで考えているだなんてなかなかに刺激的な話題だったかもしれません。しかし、日本において、政治権力によって作られ社会のスタンダードになっているものは、他にもたくさん存在します。

例えば、ウォールストリートジャーナルの記事にも触れられていますが、「時間厳守」という社会通年もまた、日本の近代化にともなって生まれたものです。「遅刻の誕生」(橋本茂久ほか)というとても興味深い本があります。この本によれば、現在のように1日を24等分にして時間をはかるようになったのは、明治6年以降であると言われています。それまでの日本では不定時法といって、季節によって単位あたり時間の長さが変わるカウント方法を使っていました。日本ではその時代、社会を近代化し、西洋に追いつくためにあらゆるものを西洋規格に修正していたのです。時刻もまた杓子定規な定時法に変わったことで、日本人は強烈に時間というものを意識するようになりました。かくして、日本人の遅刻に対する社会的な罪の観念が生まれました。

lovegame-330x231ちなみに、同じく日本の近代化に伴って変化をしたものは、「恋愛」があります。現代では一夫一婦制が普通になっていますし、不倫は断罪されるべきものになっていますが、これもまた、強烈に西洋の倫理観の影響をうけています。その証拠に、明治天皇は正室以外にも側室が5人おり、側室との間にはなんと15人もの子供がいたといいます。

参考記事 https://blog.livedoor.jp/hsnemu/archives/3278910.html

一夫一婦制は明らかに日本固有のものではなく、キリスト教という外来の信仰と一緒に輸入されたものです。明治時代にはこうして、時間の観念から恋愛や家族についての考え方まで、あらゆるものが西洋化していきました。それもこれも全て、日本を近代化し、西洋に負けない国にするという指導者層の意図によって作り上げられたものです。

働き方1つとっても社会や他人の影響を受けているという事実からスタートしよう

shutterstock_114318994-330x259さて、働き方の話に戻りましょう。上のウォールストリートジャーナルの記事には、日本が西洋化近代化した時代と同じような変化を、安倍さんが起こそうとしている、という実に驚くべき内容が書いてあります。少し前までちょんまげだった日本が、いきなり口ひげにステッキの国に変わったのと同じくらいの変化を現代日本に起こそうとしているのだから驚きです。

現在働き方について混乱や不安が生じるのはある意味当然なことです。つまり、現在はそれだけ、古いものと新しいものが混ざった、混迷した時代だということです。自分が今いる会社のやり方に、どこか納得できない。時代遅れな気がする。しかし、書店に行ってビジネス書を読んだり、雑誌でビジネスの欄を読んでも、どこかしっくりとこない。そんな複雑な思いを抱えている人は多いのではないでしょうか。

私はこの会社で働き出してからおよそ1年と少しが経った所ですが、会社が自分の居場所のように感じるのも違うと思いますし、逆に完全に生産性を追求する場所でも、どちらでもないと思っています。私のいるビハイア確かには良い会社で、社員同士の仲が普通の会社よりも良いと思います。

しかしまるで家族のように、一生を一緒に過ごす人として感じているかというと、それには少しついて行けないなと感じてしまいます。とはいえ、完全にドライに売り上げなど数字の論理でだけ働いているわけでもありません。お互いに対する気遣いや配慮が無ければ、働いていてもどこか虚しさを感じてしまうはずです。これを読んでいるあなたもきっとそうではないでしょうか。実際には、自立とも依存とも割り切れない、1と0との間に個人と会社との関係性はあるはずです。

AdobeStock_63118799-e1450225558855-300x131自分の働き方についての価値観が何に左右されているかを知り、自分はどんな働き方をしたしいのか。そんな事を自分の頭で考え自分の考え方を確立すること。それは非常に難しいことだと思います。でも少なくとも、自分がどんな価値観に影響をうけて働いているのか、それは本当に自分に適したものなのか、一度吟味してみることをお勧めします。人間は、自分が進んで選んだものにこそ本当の意味での主体性と責任感をもつことができるからです。

働きながら、本当の意味で自分らしい働き方を見つけられたなら、本当の意味で自分らしく生産性を発揮し、仕事に今まで以上の充実感を感じてゆけるはずです。私自身も、ビハイアの中で、時に辛いことも経験したり、時に上司に暖かい言葉をかけてもらいながら、自分に適した仕事との付き合い方を模索している途中です。これからアニメゲーム漫画業界に入っていく人、新しい職場に移っていく人は、上で書いたようなことを念頭においてみてください。あなたが会社に求めるものは、暖かい人間関係ですか?安定した給与ですか?あるいは、ドライでプロフェッショナルな資本主義ですか?そのいずれでもないとしたら、何ですか?

私も時々、そんなことを考えながら仕事をしています。そんな問いかけを続けることで、自分が望む働き方が見つけて伸び伸びと働ける人が1人でも増えればいい、そう思ってこの記事を書きました。皆さんのご参考になれば幸いです。

この記事を書いた人

» 詳細プロフィール

アニメ ゲーム マンガ経営戦略研究所

新着記事
カテゴリー
  • 企業担当者様へ
  • 求職者の方へ
  • 特集求人
  • 経営者交流会情報
  • メルマガバックナンバー
Tweet