今回のラクジョブはスペシャル企画!現在放映中のアニメ「うしおととら」ED曲「決戦前夜」を手がけているLUNKHEADのボーカルの小高芳太朗さんにお話を伺いました!私、平田自身がデビュー当時からずっとファンをやっているということもありますが、何より小高さん自身が漫画に対して並々ならぬ熱い想いを持っていました。
同じクリエイティブの業界でありながらも意外と知らない音楽の世界。いつものラクジョブと少し違う内容ではありますが、十二分にクリエイターの皆さんの励みにもなる内容です。長編のインタビュー、前後編で是非お楽しみ下さい!
LUNKHEAD 「決戦前夜」はこちらから!
LUNKHEADは2004年のメジャーデビューから13年にわたって活動しているロックバンドです。今回のようなアニメのタイアップはこれまで初めてですが、ボーカルの小高さんが漫画が大好きであることや、自らも絵を描いていることはファンの中ではよく知られています。
いまだに漫画家に対する憧れはある
−−−クリエイティブは何かと大変だと思われがちな職業です。我々はアニメゲームマンガ業界との付き合いが多いですが、何となく音楽業界はもっと大変なんじゃないか・・・みたいなイメージもあります。
小高:いやいや、それはやっぱり慣れというか・・・例えばギターを弾けない人にとってはギターの弦の交換ってすごい大変な作業に思えるけど(通常20分以上かかるとは言われている)、俺らはライフワークだから5分くらいでぺペーって終わらせられる。でも逆に、アニメーターとか漫画家さんにとって当たり前のことが多分俺らには、「信じらんねぇ・・・こんなこと毎回やるのかよ・・・」ってなるんだと思う。その基礎的なところの敷居の高さって言うか・・・そういうのがクリエイティブなジャンルにはどの畑にもありますよね。
漫画家さんならペンに慣れろっていうのあるじゃないですか。真っ直ぐな線がペンで描けるようになれ、みたいなの。それってギターで言えば、まずコードが押さえられるようになれ、ですね。まあFの壁っていうのがね、めっちゃ大変って言われるけど、弾けるようになるとなんともない。弾けるよね?っていう。(註:ギターの演奏で必須となる「F」というコードは、大変押さえにくいことで有名)漫画家さんだったらそりゃ、かすれないで直線ひけるし、集中線もひけるよね、みたいな。そういう最初に乗り越えるべき壁はどのジャンルでもあるんでしょうね。「好きこそのものの上手なれ」じゃないですけど、ギター始めようとする人でも「Fが弾けねぇ、駄目だ」って諦める人が8割くらいいますから。
−−−音楽の業界は数年の間に劇的に変わっていて、その上少ない人数で音楽性を確立させていかなければいけない。マンガやアニメといったエンターテインメントのクリエイターも生き残りを賭けて作品を作る所があります。そこには共通するものもあるのかもしれませんが、この大変な業界で長く続けて行ける理由みたいなものはありますか?
小高:未だやっぱ漫画家の人達とか絵描きの人達にすごい憧れがあります。その生き方とか。漫画家って孤独で、漫画にこだわり続けている。俺の好きな漫画家さん達って、死ぬほどマンガが好きなんですよね。そこでしか生きられない感じがすごい伝わってくるからすごい憧れるんです。これ以外にやるべきことは何も無いみたいなのが作品からほとばしってくるから。『うしおととら』にもそれは感じますね。
クリエイターとして続けられる理由は「好き」だけではない
−−−小高さんが音楽を選んだのも、そこでしか生きられないからですか?
小高:俺が音楽を選んだ理由も結局はそこかも知れないです。俺もメンバーもこれしかやりたい事が無かったから続いてる。他にやりたいことが出来ると辞めてしまう人もいるので、ただ「好き」とも違うんですけど。・・・好きではありますけど、楽しいだけではないじゃないですか。だけどしんどいことすらも次に繋がってく感じって言うか、「ここしかないな」って思う瞬間があるんですよ。俺らはそれがやっぱりライブなんだと思うけど、ネガティブでもポジティブでもなくて「ここにしか自分の居場所は無い」みたいな瞬間。それがあるから頑張れるのかなって思います。
アニメや漫画のクリエイターの世界もそうだと思うけれど、売れてる人と売れてない人の景色は全く違うんですよね。例えば有名アーティストの特集やってて、売れてる人達のPVとか見ると「このPVいくらかかってんだよ・・・」とか感じるみたいに、自分の中では売れてる人に対して卑屈になる気持ちもあるんですよ。同じように漫画家さんでもすごい売れてる人と、やってもやっても打ち切りになる人といて、でもマンガ読む時に売れてる売れてないっていうのは、受信する読者側としては気にしないですよね。音楽のファンもそうなんだろうなって思います。
少年ジャンプと日本橋ヨヲコに励まされる
小高:俺すごい少年ジャンプが好きでジャンプ歴28年くらいなんですけど、ジャンプも新連載が年にいくつかありますよね。大体は1巻2巻で打ち切りになっちゃうんですよ。その中ですごい好きな作品があっても、段々人気が無いと巻末に行くんですよ。それを何とか粘って欲しい粘って欲しい・・・あっ今週ちょっと真ん中に来た!みたいに読んでる。でも打ち切りになるとすごい悲しい。だから新連載が始まると頑張って欲しいと思いますね。
一番好きな漫画家は日本橋ヨヲコ先生です。代表作に『G線上ヘヴンズドア』って漫画家になりたい男の子の話があって、日本橋先生の作品をデビュー作からずっと読んでるとすごい分かるんですけど、『G線』ってめちゃくちゃご本人を投影してるんですよね。ご本人も人気が出ない頃は打ち切り続きで悔しい思いをされてて、『G線』が初めて思った通りのエンディングを描けた作品らしいんです。3巻って短さですが、いつ打ち切りになるか分からないからストーリーの組み方を考えてらっしゃったと思うんですよ。あれをきっかけにすごい人気が出たから、今描いてらっしゃる『少女ファイト』はすごくじっくり丁寧にストーリーを描いている。
『G線』は切羽詰まったギリギリの崖っぷちで、いつ終わりって言われるかもわからない状況で描かれていたと思うんで、すごい本人の苦悩とか葛藤とか悔しさとかが反映されてるなって読むたび感じます。マンガをテーマにした作品だから、すごい好きだった作品がいきなり打ち切りになっちゃう話も中に入ってる。そこで漫画家って言うのはすごいギリギリの所で闘っているんだっていうエピソードがあるんですけど、そこがジャンルは違うけれど自分達にリンクするところもあって、そのギリギリ感が俺らみたいなポジションのバンドは読んでてすごい励まされるんですよね。
−−−でも違う部分もあるから憧れがあるんでしょうか?
小高:それは、基礎スキルが俺らに無いからっていう「弦の張り替え」の例みたいな話もあるけど・・・もう単に週刊連載って地獄だよなっていう・・・俺らで考えると「毎週1曲完パケ」って思うと吐くなっていう・・・。まあ今がそうなんですけど・・・月末レコーディングであと2曲作らなきゃいけないっていう・・・俺らはそれを乗り越えたらとりあえず終わるからいいけど、マンガ家さんは連載終わるまでエンドレスで続いてくわけですからすごいですよね・・・。人気が出たらもっと長引くし。
尾田栄一郎先生とかもう81巻も行ってるのに、今の方が初期より絵を描き込んでますよね!めちゃめちゃ描き込んでるし、描き込んでるの絶対アシスタントじゃないよなっていうクオリティ。アシスタントの臭いがしないんですよ。藤田先生も絶対に週刊連載じゃ描けないレベルなんですよ。例えば藤田先生の作品って、『うしおととら』も目を描き直しすぎてホワイトで原稿が盛り上がってるらしいんです。だから白面とか鏢とかの澱んだ目って、ホワイトの盛り上がりなんだ!って合点がいって・・・。
漫画のことになるとかなり語り口がアツく、異様に詳しい小高さん。クリエイターとして漫画がいかにモチベーションの1つとなっているか、すごい勢いで語って頂きました。前半は漫画の話についてまとめましたが、明日更新の後編では小高さんと音楽の関係について伺います。何故オリジナル楽曲で勝負をするようにしようと考えたのか、今後手がけたい作品の主題歌などについて赤裸々に語って頂きました。オリジナルを作り出すクリエイターを目指す方には、特に楽しんで頂ける記事となっております。
ランクヘッド「決戦前夜」は現在、アニメ「うしおととら」のエンディングテーマとして聴くことができます。クライマックスの展開に寄り添うような気合いの入った1曲。こちらからもシングルをご購入頂けますのでチェックしてみて下さい!