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2019.06.23 ”パクリ”はどこまで許される?後編「オマージュとパロディの境界線」【アニメゲームマンガ転職コラム(+猫)】

img_2204ここでは、ラクジョブメルマガで会員の皆さんにお届けしている就職・転職に関するコラム(と、全く無関係に撮られた弊社の猫の写真)をお送りします! ちなみに本日の猫は「隙間から覗くねこ」です。本編とは関係ありません。

今日のテーマは「”パクリ”はどこまで許される?後編 オマージュとパロディの境界線」です。
オマージュとパクリ問題、最終日の今日はアニメゲーム漫画でも多用される「オマージュ」についてお話しします。

【「敬意」のあるパクリとは?】
そもそもオマージュとはフランス語homage(尊敬、敬意)を元とした英語です。ある作品(作家)に敬意を表し、その影響を隠さない作品を作ることがオマージュの大まかな意味となります。つまり、オマージュした作品はオマージュ元の作品に敬意を払っていることが前提となります。しかし制作側が「これはあの作品のオマージュです」と最初から全てをつまびらかにすることはありませんし、「オマージュをしていいですか?」とオリジナル作品に許可を取ることもほとんどありません。しかしオマージュ作品とされるものには作品の根幹に関わる原案レベルのものからキャラクターデザインなどの細かい部分まで様々なレベルで存在し、オマージュをパクリと判断するか、敬意を込めた創作行為と判断するかは受け手の意識にも左右されます。

左がチャック、右がGir

左がチャック、右がGir

【ネタ元パロディを認める例も】
オマージュかパクリか、ということで少しだけ問題になったアニメに、ガイナックスの『Panty & Stocking with Garterbelt』という作品がありました。この作品はアメリカンカートゥーン風に描かれたキャラクターデザインが魅力の1つでしたが、その中に出てくるマスコットキャラクター、チャックが、本場アメリカのアニメ『Invader Zim』のキャラクター、Girと酷似していたのです。

緑色の肌、黒い手足、ジッパーをあしらったデザイン、目玉の形なども似ており、一時期「これは日本側がキャラクターデザインをパクったのでは?」と若干話題になりました。もちろん昨日までに前述した通り、アメリカのキャラクターに改変が加えられたようなキャラクターデザインではないので厳密に盗用とは言えませんが、問題視するファンは少なからずいました。

そういった意見に対してアメリカのキャラクターを作ったスタッフが次のような声明を出しました。「Girが新しい仕事を見つけられたみたいで嬉しいです。(中略)もっと彼を見たいと思いますね。」(Invader Zim Creator Comments on Panty & Stocking/ANIME NEWS NETWORK)このように、制作元の会社が歓迎することによってキャラクターの酷似が好意的に受け取られることもあります。因みに『Invader Zim』は作中内でエヴァンゲリオンのパロディも取り入れており(9話Bパート)、アニメ製作スタッフが相互でリスペクトを交わしたような形となっています。また、エヴァンゲリオン自身がオマージュ(パロディ)に満ちた作品であることは様々な指摘がされています。

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問題となった商品(画像クリックリンク先サイト、ねとらぼより)

【ポプテピピックの許されなかったパロディ】
最近パロディが多く使われた作品として最も知名度があるのは『ポプテピピック』でしょう。これはアニメ化の際に版権周りをきちんと確認しているため大きなNGが出ない…という噂がまことしやかに業界内で流れていましたが、本当のところがどうかはわかりません。これは制作者側が意図的にパロディを盛り込んでいる作品でしたが、もちろんオリジナルのネタ元の怒りに触れればお蔵入りとなります。
しかし、ポプテピピックの中でもNGが出たパロディがありました。アニメではなく商品化の例です。ポプテピピックのキャラクターに、寺沢武一の漫画『コブラ』の主人公の特徴である「サイコガン」を持たせたもので、寺沢武一側が断りのない商品化であるとネット上で声を上げたものです。
これに関しても厳密に言えば、本家である『コブラ』のイラストを使ったわけでは無いことから厳密に著作権侵害とは言い難いのですが、原作元の感情を損ねたという意味では業界でのNGとなります。また、パロディ化されたキャラクターを切り離して商品化したというのも問題の火種をはらんでいます。
ちなみに似たような例ですが、サザエさんとバカボンのパパを合わせた「サザエボン」は、どちらの版権元とも関係ない会社が制作・販売し、結果として著作権侵害の理由から販売停止となっています。これは先日述べた「ディズニーキャラに限りなく似たイラストをつけてお菓子を売る」行為と少し似ており、オリジナルとの混合が問題となります。

【パロディとオマージュの線引き】
ここまで3日に渡り、パロディとオマージュについて調べてきました。明らかに法的な問題となるのは「オリジナルの作品元に許可を取らず、トレースや画像の一部変更を行って発表するもの」です。一方モチーフや原案を似せたパロディは法的な罪には問われませんが、オリジナルへの敬意が希薄だった場合や、パロディ作品そのもの単体での商品化を狙う場合にはユーザーやオリジナルからの反発を受けることがあります。
1日目にも書いたとおり、どこからも影響を受けないで創作活動を行うことは不可能に近いものです。そして、そういったパロディやオマージュと言われるものが、リアルタイムにオリジナルを知らない世代への布教活動の様になる効果もあります。正しい文法と正しい敬意によるパロディ、オマージュ表現は今後もアニメゲームマンガ作品の中でたびたび使われてゆくことでしょう。その時に気持ちよく楽しめる知識を、創り手も受け手も持っていたいものです。

参考:平成25年3月文化審議会著作権分科会法制問題小委員会「パロディワーキングチーム 報告書」

次回は「何万部売れればOK? 売上金額から考える漫画単行本の打ち切りラインとは」を考えます!

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