アニメ業界は、低賃金、長時間労働、人材不足などなど様々な問題が言われていますが、今回はちょっと視点を高くしてアニメ産業全体から見たアニメ制作会社の状況に関しての記事を書いております。
アニメ関連産業と制作会社
日本動画協会が発行する「アニメ産業レポート2015」によれば2014年のアニメ関連産業全体の市場規模は1兆6297億円になります。そのうち同じ時期の制作会社の売上高で見てみると約1847億円、アニメ産業全体の約11%ほどです。
アニメ制作と放送にかかる費用
アニメ製作は一般的に製作委員会方式が取られています。何よりアニメ製作には巨額の資金が必要となるため、リスク分散も含めてこの方法がとられています。では実際どれくらいの費用がかかるのでしょうか。
引用始め
■キッズ向けTVアニメの製作資金例
・製作費1話1,000万円×52話(4クール)=5億2,000万円
・放送枠料2,500万円×12ヵ月=3億円
⇒約8億2,000万円
■深夜枠TVアニメの製作資金例
・製作費1話2,000万円×13話(1クール)=2億6,000万円
・放送費用+宣伝費=4,000万円
⇒約3億円
引用終わり
(参考サイト:https://vippernews.net/archives/4388643.html)
あくまでもこれはアニメの制作と放送にかかるための費用のためこれとは別に商品化やグッズ化などがかかってきますが、それでも数億単位の資金が必要となります。それにしてもテレビ放送のための放送枠料だけで月に数千万単位という資金が必要というのは驚きです。
そのように多額の資金が必要となる一方で、アニメの権利は出資者が独占しているというため弊害も起こっています。
製作委員会方式の弊害
その問題の一つが、権利の分散により、事業展開をしづらくしているところです。アニメには、多くの出資者が集まるといいましたが、主に原作元も出版社、商品開発を行う会社、テレビ放送局、広告代理店などがメインとなります。それに加えて、声優一人一人にも権利があるなどかなり細かく分かれています。そのためアニメのコンテンツを新しく展開する際はこれらの企業の了承を得る必要がありかなり手間と労力が必要となります。最も影響が出たのが海外への輸出になります。今であれば、海外の動画配信サイトと提携して海外向けに配信されていました。しかしその環境が整う以前は、放送終了と同時に違法にアップロードされ、さらに現地の有志によって翻訳され、放送から半日もたたないうちに現地語に翻訳されたアニメが海外サイトにアップされるという状況が続いていました。今でもその複雑な権利によって商品の輸出は積極的には行われていません。逆に言えば、海外へ輸出しなくても制作会社以外の9割の収益で十分利益が出ているとも言えます。
もう一つの弊害が表現です。製作委員会の中には必ずテレビ局も出資しています。これによって何が行われているか言えば自主規制という名目での表現の規制です。メディアにとってできるだけ避けたいのが、エログロ暴力などの表現です。しかしこれらの表現は原作となる漫画や小説には多く含まれています。例えばお色気シーンに光や影、煙が入ったりするのはわかりやすいですが、主要なキャラクター殺されるたり死んでいるシーンなどは、表現がオブラートになっています。真っ黒くなったり、敢えてそのシーンをカットしてそれらの前後を見せることで死を連想させたり、グロさが出そうな角度からの描写を避けたりなど表現方法は様々あり、ある意味、監督さんの表現の多様さには感嘆されます。しかし、エログロ暴力、特に主要キャラクターの死はというものはストーリーにとっても大きな転換点であり、アニメの重要なファクターです。それゆえにこれらの表現に影響が出てくる場合は違う方法も考えるべきでしょう。
権利と放送
これまでに権利と放送に関しての弊害を書かせていただきました。その解決策としては製作委員会方式からの脱却もしくは、権利の集約と制作予算の見直しができるかです。冒頭でも書かせていただいた通り、アニメの制作会社は、低賃金長時間労働が常習化しています。そのため、クリエイター自身が疲弊しているのに加え、アニメ会社自身も疲弊していく状況です。これでは近い未来アニメ業界が潰れてしまうと言われても仕方ありません。一方で、制作会社以外の出資者に関しては、約1兆4000万円もの売上高をあげています。これであれば制作費の予算の見直しも可能でしょうし、海外展開を視野にプロジェクトを進めれば今以上の収益を上げることが可能となるのではないでしょうか。出資者にとっても要のアニメ会社が潰れてしまっては元も子もないので、早急な制作費の見直しが必要となるのではないでしょうか。またはCygamesのような大企業が1社で全てをまかなえるようなタイトルが増え、最初から海外展開も視野に入れたビジネスモデルが可能となればアニメのクオリティーの向上やアニメの制作会社の環境の改善に向かっていくでしょう。