最近ゲームパブリッシャーの方と話をすると、よく「新規IPの創出」という言葉を聞きます。今回はこの新規IPの創出についての話です。
IPとは何か
定義的に言えば、IPとは、 Intellectual Propertyの略で、日本語に訳すと知的財産のことです。知的財産については、IT用語辞典から引用します。
「知的財産とは、人の精神的な創造行動から生まれた創作物や、営業上の信用を表した標識などの経済的な価値を有したモノの総称。これを守る法制度上の権利としては著作権、特許権、意匠権、商標権などがある。また、広義ではインターネットのドメイン名、肖像権、著名標識、営業秘密なども含まれる。」
つまり、アニメやゲーム、マンガ、ラノベ、キャラクターなどは全てこの知的財産、IPに属するものになります。
しかし、ゲームパブリッシャーがIPというとき、その意味はもう少し限定的なものになります。新しくスマホゲームの企画が立ち上がるとき大きく分けると二つのタイプになります。
1つは既存IPを活用すること。これはアニメや漫画、コンシューマーゲーム、ガラケーのソーシャルゲームなどを原作として新しくスマホゲームを作るパターンです。既存IPを活用することで、原作のファンからの注目や拡散が期待できるため、収益化の目途がつきやすいです。「ラブライブ! スクールアイドルフェスティバル」や「Fate/Grand Order」はこの例です。
もう1つが、新規IPを創出すること。原作となるような作品もない中で1からIPを創出することを指します。原作がない分、周知を集めにくいです。収益化のハードルもこちらの方が高いです。「モンスターストライク」、「パズル&ドラゴンズ」などが代表作です。
なぜ自分たちのIPが欲しいのか
新規IPの創出は、既存IPを活用するよりもハードルが高いにもかかわらず、多くのゲームパブリッシャーは新規IPでスマホゲームを作りたいと言います。そこにはいくつかの理由が考えられます。
1つには、ゲームの自由度が低い点です。例えば、ディズニーやガンダムを考えてみればわかりやすいと思いますが、既存IPを原作にスマホゲームを作ろうとしても、原作者の意向に沿っていないゲームは世に公開することができません。スピード重視なスマホゲームの運営において原作サイドと密な連携体制を構築できていないと大きなマイナスになります。自社のIPであれば、社内ですぐに社内で決定して、すぐにゲームに反映させることができます。そのスピード感の実現は自社IPならではと言えるでしょう。
2つ目は、収益を100%自社のものにできるという点です。原作があると、原作サイドにも収益の一部を還元する構造になりますし、既存IPを原作にスマホゲームを作ったとしてもその先の展開をハンドリングすることはできません。例えば、パズドラは、2016年にコンシューマーゲーム、テレビアニメ放送、漫画連載など様々にメディアミックスを広げていますが、それはパズドラがスマホゲーム発の新規IPだったからできたことで、ラブライブの漫画が出たとしてもそれをスマホゲームのラブライブが原作だとは言えません。IPのハンドリングができることが新規IPの一番の強みです。
新規IPの創出のために必要なこと
とは言え、先ほども書いたように、新規IPでスマホゲームをヒットさせることは年々難しくなっています。パズドラがヒットした4年前であれば、新規IPのスマホゲームが大ヒットしてして自社IPとして大きな資産を形成することも可能でしたが、今からIPを原作にせずにスマホゲームをヒットさせることは難しいです。
そこで、ゲームそのものではなく、ゲームに関わるスタッフからスマホゲームの注目度を高めようとする試みが強くなっています。声優、シナリオ、キャラクターデザイン、音楽、ディレクション、プロデュースなどに有名クリエイターや実績のあるクリエイターを起用するケースのゲームが増えています。この辺りは新規IPの創出が多いアニメ制作に置き換えてみるとわかりやすいかと思います。
社内コンペやデベロッパーからの企画提案も年々通りにくくなっています。開発費、PR費も高騰し、1本1億では利かなくなってきています。数億のお金をかける決断にゴーを出すためには、外堀をしっかりと固める必要があります。ゲームを作ろうとしている新規IPを創出しようとしている人はぜひ参考にしてみてください。また、ビ・ハイアにも業界内のコネクションは多く蓄積されていますので、お困りの際はお気軽にご相談ください。